81: ◆nlCx7YJs2Q[saga]
2013/12/18(水) 22:28:20.62 ID:pe+m8KwQo
そこが致命的なまでに世間知らずだった。あまりにも兵を失いすぎた敵国は、『降参する』という選択肢まで奪われたからな。だがヤツのその有り様としては正しかったのかもしれない。
「何故かしら?」
少なくともヤツは『民衆』の為に命を惜しんでいなかった。『その身を捧げる』なんて古い言い回しをしていたが、事実ヤツはその通りにしていた。心の底から『民衆』を想っていた。
「良き為政者だったかは別として、ね」
そうだ、実際、民衆からの人気は絶大だった、ヤツの姿を模し、金と宝石で細工された像が街に立つほどにな。どんな時も笑顔で、そこに立つだけで人々を笑顔にするだけの『華』があった。その国の『幸福の象徴』だったよ。
「素晴らしい人格者であったことには違いないのね」
できればその慈悲をティースプーン一杯分でも俺にくれれば少しは楽だったろうに。
「ところで、おじさん?」
なんだろうか?
「今回は女性絡みではないようね?兵隊には『そういうのが』多いと聴くけれど、まさか男の人にまで手を……」
いいや?ヤツは女性だったが?
「……どういうことかしら?」
その国の王は世継ぎに恵まれなくてな。『王女』として生まれたヤツは、仕方なく『王子』として戦線に立った。それがどうかしたか?
「…………」
なにかおかしいだろうか?
「続けなさい」
命令か。
「続けなさいっ」
二回もか。
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