過去ログ - 対木もこ「私と荒川憩のカレーうどん戦争」
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23: ◆cvvZKri7SI[saga sage]
2013/12/11(水) 04:56:57.10 ID:3XmGIBxHo

 しかしこいつも他人をあまり気にしないらしい。結局私の考えは通じず、帰るどころか周りの視線などお構いなしに話しかけてくる。
 そういう意味では似ていなくもないだろうが、似ているようで全然違う。
 こいつが気にしないのは他人の目線であって、他人自体は気にしている。
 でなければわざわざ新聞の記事を見て私のところになど来ないだろう。

「きいしえう……」

 飲み込んでから喋れ。
 そもそも私は食事中に話すのが嫌いなんだが、やはり関西は口から先に生まれてきた奴らばかりなのだろうか。

「んむ……んん。気にしてるいうより、気にかけてるんよぉ」
「……」
「やっぱり友達は一人でも多いほうがええねんなぁ」

 レンゲでスープをちびちびとすする。口調だけではなく、食べるのも間延びしているようだ。
 食べると言うより、慣れるといったほうが近いか。
 海老フライの尻尾を口に運び、味噌汁で流し込む。

 友達。
 友達、か。
 友達、ねぇ。

 好きな言葉ではない。
 悪い言葉ほど、耳に良く残る。

「もこちゃんやって、うちがさっき床で食べよとしたとき、驚いてたやんかぁ」
「……」
「せやからもこちゃんも、他人が気にならへんなんてことあらへんよぉ」

 それは。
 それは、単純に。
 目の前で、突然ナース服が床に座ったという、私にとって初めての光景に驚いただけだ。
 別段こいつ自体に何か思ったわけではない。
 本当に。本音で。比喩ではなく。冗談でもなく。
 私は他人の目線も、他人自体もどうでもいい。

 箸をおく。やはり少食の私には、日替わり定食は多かったか。
 食べ切れなかったが、まぁ良いだろう。海老フライがなんとなく食べたかっただけで、後は別にそう言うわけでもなかったのだ。

「もこちゃん? どこ行くん?」

 どこに行くも何も、教室に戻るだけだ。私は学生なのだから何も間違ってはいない。
 小首をかしげるナース服を無視して、立ち上がって盆を持つ。
 そしてそのまま返却口へと向かう。後ろで何か慌てているような声がしたけれど、私には関係ない。


 そのまま食堂を後にして、ようやく数十分ぶりに私は一人になれた。


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