過去ログ - 対木もこ「私と荒川憩のカレーうどん戦争」
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36: ◆cvvZKri7SI[saga sage]
2013/12/11(水) 05:04:03.39 ID:3XmGIBxHo

「ご、ごめんね」

 謝るくらいなら最初から言うな。

 結局ショートカットはせず、右手に折れる。
 本校舎と食堂を繋ぐ渡り廊下をくぐりながら、日陰に足を踏み入れた。
 もう一、二ヶ月すればここのプールも授業で使うことになるだろう。
 走るより泳ぐ方が尚更苦手な私にとっては、より頭が痛くなる話だ。

「でも、対木さん、いつもそうだから」
「別に」

 別に私は大層な人間じゃない。
 つまらない人生を生きてきただけで、
 くだらない人間に育ってきただけで、
 ミステリアスなんて言葉は買い被りで買いすぎな評価だ。
 私はもっと、取るに足らない語るに足らない、見た目通りに、見た目以上に、小さな人間でしかない。

「対木さん、自分を過小評価しすぎだよ……」
「正当な評価だよ」
「でも……」

 その先の言葉は、一分ほど出てこなかった。恐らく言葉を選んだのではなく、言葉を探したんだろう。

 複数ある選択肢から取り出すのが選ぶとうことで、
 何もない選択肢から用意するのが探すということだ。
 たかだか一、二ヶ月同じクラスにいただけで、私について選べるほど何かを感じ取れる付き合いではない。
 同時に、こいつについてどんな言葉をどこまで掛けていいのかなんてこと、私は知らない。

 だから、きっぱりと。
 思ったままのことを言う。


「委員長」
「……」
「そろそろ、鬱陶しい」
「……」
「もう、いいでしょ」
「……」
「……」

 ひとりにしてくれ。



 ごめんね、と何度目か分からない言葉をおいて、委員長は俯いて走り出した。


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