過去ログ - 対木もこ「私と荒川憩のカレーうどん戦争」
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92: ◆cvvZKri7SI[saga sage]
2013/12/13(金) 16:16:09.58 ID:1dwOiOSUo

 歩行者信号が点滅し、やがて赤くなった。
 三車線の信号は更にここから右折用として、矢印を点す。

「もし仮に委員長が転ばせたんやないとしたら、せめて殺人だけでも変えられへんかなぁ。そら、死体隠したりした以上、罪にはなるけど」
「……」
「……」
「……」
「……ごめん」

 過程がどうであれ、動機がどうであれ、金髪を殺したのは間違いなく委員長だ。
 これは殺人で、人を殺すのは常に人だ。
 災害に意思はないし、虎に噛み千切られたとしても、それも事故。
 虎に人を殺す意思はない。ただ餌として認識し、食べるために歯を立てるだけ。
 その結果死んだとしても、それは虎の意思ではない。
 最初から殺意を持って、最後まで殺意で立つのは人だけだ。

 その線引きだけは、間違えるわけにはいかない。
 間違えては、いけない。


 歩行者信号が青く灯る。
 ナース服が口を開くより先に、足を踏み出した。

「……もこちゃん!」

 車の音にかき消されない声で、ナース服が叫んだ。
 周りの歩行者の目が痛い。
 無視しても良いが、多分あいつは私の名前を呼び続けるだろう。
 仕方がないので、振り向くことにする。

「……また、会おうなぁ!」

 ぶんぶんと手を振り、そんな馬鹿みたいなことを、馬鹿みたいな笑顔で、叫んだ。

 無視するには耳に残る、良く通る声だ。
 だけれど。
 やっぱり。
 私は。

「……」


 ひとりが、お似合いだ。


 何も答えずに、踵を返す。

 今度こそナース服の言葉は周りにかき消され、聞こえなくなった。


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