過去ログ - 対木もこ「私と荒川憩のカレーうどん戦争」
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◆cvvZKri7SI
[saga sage]
2013/12/13(金) 16:16:09.58 ID:1dwOiOSUo
歩行者信号が点滅し、やがて赤くなった。
三車線の信号は更にここから右折用として、矢印を点す。
「もし仮に委員長が転ばせたんやないとしたら、せめて殺人だけでも変えられへんかなぁ。そら、死体隠したりした以上、罪にはなるけど」
「……」
「……」
「……」
「……ごめん」
過程がどうであれ、動機がどうであれ、金髪を殺したのは間違いなく委員長だ。
これは殺人で、人を殺すのは常に人だ。
災害に意思はないし、虎に噛み千切られたとしても、それも事故。
虎に人を殺す意思はない。ただ餌として認識し、食べるために歯を立てるだけ。
その結果死んだとしても、それは虎の意思ではない。
最初から殺意を持って、最後まで殺意で立つのは人だけだ。
その線引きだけは、間違えるわけにはいかない。
間違えては、いけない。
歩行者信号が青く灯る。
ナース服が口を開くより先に、足を踏み出した。
「……もこちゃん!」
車の音にかき消されない声で、ナース服が叫んだ。
周りの歩行者の目が痛い。
無視しても良いが、多分あいつは私の名前を呼び続けるだろう。
仕方がないので、振り向くことにする。
「……また、会おうなぁ!」
ぶんぶんと手を振り、そんな馬鹿みたいなことを、馬鹿みたいな笑顔で、叫んだ。
無視するには耳に残る、良く通る声だ。
だけれど。
やっぱり。
私は。
「……」
ひとりが、お似合いだ。
何も答えずに、踵を返す。
今度こそナース服の言葉は周りにかき消され、聞こえなくなった。
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