過去ログ - 美穂「一期一会のアルペジオ」
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13: ◆CiplHxdHi6[saga]
2013/12/14(土) 00:03:52.04 ID:JQeRQEBk0
プロデューサーとしての最初の仕事は未来のトップアイドルの原石たちをスカウトすることだった。
社長からは3ヶ条のシンプルすぎる指南書だけ渡されて、そのまま外へと放り出される。
俗に言うOJTってやつだろうか。ただ俺の場合、ロクな説明もなくいきなり社会に投げ飛ばされてしまったのだけど。

ああだこうだ嘆いても仕方ない。とにかく自分の琴線をくすぐる存在を求めて俺はひたすら声をかけまくった。

アイドルなんて誰もが夢見るお仕事だ。アイドルやらないか? とスカウトされたら、みんなホイホイついてくるだろうと楽観的に思っていたのは最初だけで。

『アイドルに興味ない? あっ、ないですか。すんません』

3人目に声をかけたあたりでようやく、自分が思っている以上にやおいかん(大変な)事に巻き込まれたばい、と気付くことが出来た。

笑顔で言ってみても女の子達の反応は暖かいものじゃない。ある時は新手のナンパと勘違いされ、ある時は通報されて。2分だけでも1分だけでもと言ってみても誰も話を聞いちゃくれない。

東京、横浜、名古屋、大阪――。どんどん西に向かって燻っている原石を探し続けるも、俺の勧誘の仕方が悪いのか事務所が全くの無名なのがいけないのか、
それとも最近の若い子はアイドル自体に興味がないのか結果は芳しくなかった。

もっと深く考えてハンコを押すべきだったと後悔したこともあるが、それ以上に社長の言葉が俺の中で繰り返されていた。

『未来のトップアイドルを君の手で育ててみないかい?』

社長たちは俺を信じている。そして俺自身、この手でトップアイドルへと導けたらと朧げながらも思い始めていた。
どうしてだか分からない。そもそもアイドルプロデューサーなんて数日前まで考えてもいなかったし。

ただ、どこかで期待しているモノが有るのだろうとは思う。世界を変えてしまえるような存在が、どこかに眠っていることを。
泣き言を心の中にしまって先日更に西へ向かい、実家に帰るついでに熊本にやって来たのだ。



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