過去ログ - 佐久間まゆ「いつもあの子がそばにいる」
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11:aho ◆Ye3lmuJlrA[sage]
2013/12/16(月) 21:41:29.68 ID:pFDECU7w0
「でも、私は……」
「どうしても幽霊が怖い。だったわね?」
「……はい」
「そう……ところで、歌鈴ちゃん」
「はひっ!? な、なんでつか!?」

 いきなり話を向けられるとは思っていなかったらしく、歌鈴が噛み噛みで返事をする。
 礼子はおかしそうに笑って、

「そんなに驚かなくてもいいでしょ。歌鈴ちゃんは、幽霊とか怖い方?」
「え……は、はい、あんまり得意ではないですけど……?」
「だったら……そうね、そこにある電柱を見て」

 と、礼子は喫茶店の外にある電柱を指差し、

「実は今、あそこに事故で死んだ血まみれの男の幽霊が立ってて、歌鈴ちゃんを見つめてニタァッと笑ってるんだけど」
「ひょあっ!?」
「あと、道路の向こうにあるビルの三階。あそこで首吊って死んだ男の幽霊がぶらんぶらん揺れながら恨めしそうにこっちを見てるんだけど」
「ひいぃっ!?」
「あとはね、向こうにあるマンホールの」
「ちょちょちょ、ま、まってくだしゃあ!」

 歌鈴はほとんど半泣きで礼子を止める。

「い、いきなり何怖いことばっかり言ってるんですか!? っていうか、今の本当なんですかっ!?」
「さあ、どうかしら? まあとりあえず、そういう幽霊がいたら歌鈴ちゃんは物凄く怖がるってことはよく分かったわ」
「当たり前じゃないですかそんなの……」
「それじゃ、最後」

 と、礼子はしなやかな指をピンと立て、

「ずっと昔から、内気で気弱な女の子のそばにいて、見守ったり励ましたりしながら一緒に頑張ってきた幽霊……これは、怖い?」
「へ……?」

 歌鈴が目を丸くして、それから困惑したように首を傾げる。

「いや……それは、怖くはないですね。むしろ、見られるなら見てみたいような気も」
「そう。私も同感ね」

 礼子は微笑むと、まゆに視線を戻す。
 そのときにはもう、礼子が言わんとしていることが、まゆには大体理解できていた。


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