過去ログ - 佐久間まゆ「いつもあの子がそばにいる」
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aho
◆Ye3lmuJlrA
[sage]
2013/12/16(月) 21:39:41.51 ID:pFDECU7w0
「……かわいそうだとは思ったんですけど……」
「まあ、何が起きてるのかもよく分からない状況だと、不用意なことは言えないわよね……呪われないとも限らないし」
礼子は慰めるように言った後、「それで」と訊いてくる。
「心霊現象はその後も続いたのよね。小梅ちゃんからはその後何かなかったの?」
「やっぱり何か期待しているみたいに私を見ていることはありましたけど、直接は……ただ、昨日思い切った様子で『一緒にDVD見ませんか』って声をかけてくれたんですけど」
「当然ホラーだし、やっぱり一緒に見る気にはなれなかった?」
「……そうです」
そのとき一瞬だけ、小梅が今にも泣き出しそうに顔を歪めたのだ。直後の、何とか取り繕おうとしたらしい寂しそうな微笑もあって、まゆはとうとう耐えきれなくなった。
「小梅ちゃんが私に何を期待しているのか、はっきりとは分かりませんけど……私、幽霊とか、どうしても怖くて……でも、これ以上期待させ続けてしまうのも……」
「かと言って、はっきり拒絶して傷つけるのも嫌。だから、『どうしてかは分からないけど、あの子はまゆちゃんに近づけなくなりました』みたいな形で穏便に済ませようと考えたってわけね」
「……そうです」
「あの、まゆさん」
歌鈴が確認するように言う。
「さっきまで小梅さんのことを伏せて話ていたのは、もしかして小梅さんを悪者にしたくなかったからですか?」
「……ええ。不用意に騒ぎ立てて、変な噂が立ってしまったら、って……」
事務所に入った当初、生来の口下手が祟って周囲と上手く話せずにいた小梅のことを知っているから、まゆはそれだけは絶対に避けたかった。
もちろん、事務所の仲間は皆気立ての良い子ばかりだが、自分と同じかそれ以上に怖い話の類が苦手な子もいる。
それを考えると、やはり不用意なことは出来なかった
「……ごめんなさい、礼子さん、歌鈴ちゃん」
まゆは頭を下げた。
「お二人のこと、信用していなかったわけじゃないんですけど……」
「そ、そんな、謝らなくても大丈夫ですよ!」
歌鈴が慌ててなだめてくれる。
「私、怒ったりしてないですから。まゆさんがしたこと、正しいと思います。ですよね、礼子さん」
「そうね。もちろん私も気にしてないわ。ただ、ね」
礼子は少しだけ口調を厳しくして、
「もう分かったとは思うけど、まゆちゃんがしたいと思っているようにするのは不可能よ。歌鈴ちゃんは寺生まれじゃないから」
「いや礼子さん、寺生まれかどうかはそこまで重要じゃ」
「だから、やっぱり貴方自身が現実的に対処しなければいけない。分かるわよね?」
「……そう、ですよね」
まゆは肩を落とす。
本当は、二人に相談する前から心のどこかで分かっていたのかもしれない。
小梅を傷つけず穏便に済ませるなどという都合のいい方法は存在しない、ということぐらいは。
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