過去ログ - 苗木「僕は君に恋をした」
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9: ◆EOh40d18dA[saga]
2013/12/18(水) 01:15:15.12 ID:jlb8IdPr0
「その幸運って、どんな才能なの?」

不二咲さんは興味津々に聞いてくる。

そんな目で見つめられると、期待を裏切れないじゃないか。

どう答えたものかと考えていたその時。


キーン、コーン……カーン、コーン……


突如、学校らしきチャイムが鳴った。

正直言って助かったと思ったのもつかの間。

『あー、あー……! マイクテスッ、マイクテスッ! 校内放送、校内放送……!』

全身に、鳥肌が立った。

『大丈夫? 聞こえてるよね? えーっ、ではでは……』

聞こえてくるのは、場違いな程に能天気で明るい声。

まるで某国民的に愛されている超有名キャラのような、特徴的な声だというのに。

『えー、新入生の皆さん……今から、入学式を執り行いたいと思いますので……』

ボクはその声に、強烈な悪意を感じた。

『至急、体育館までお集まりくださ〜い』

例えるなら、事故現場で鳴り響く笑い声のように、思わず眉をしかめたくなるような不快感……。

この状況が理解出来ている訳でもないけれど、本能がこの声を聞けば不幸になると警鐘を鳴らす程の嫌悪感……。

それこそ子供の中の残酷な側面のような、純粋な狂気をボクは感じた。

『……って事で、ヨロシク!』

念を押すような台詞と共に、校内放送が途切れる。

今まで全然気付かなかったが、全身から嫌な汗が流れていた。

「今のって……」

不二咲さんも怯えて、ボクの手を掴んでこちらを見る。

「体育館、だよね……」

再確認するように、ボクは呟いた。

正直、ボクは行きたくない。

何か危険じゃ済まないような――あえて形容するなら、絶望が待っているような気がするからだ。

だけど、進まない事には自分の身に何が起こっているのかは分からないだろう。

嫌だろうが怖かろうが、今は進むしかない。

「――行こうか」

自分に言い聞かせるように、ボクは不二咲さんに手を差し伸べる。

「……うん」

不二咲さんは震えている小さな手を、ボクの手の平に乗せた。


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