過去ログ - 【モバマス】「こんなにも幸せな傷あと」【佐城雪美】
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[saga]
2013/12/20(金) 22:18:23.45 ID:NFA4OfSv0
黙ったままでいる私の、手の下で……ペロがにゃぁうと悲しげに鳴く。
「ですけど、大切な人とお別れしなくちゃいけなくなった時に、アイドルである自分をも投げ捨てたら、何もかもがダメになる気がしたんです。ボクを信じてくれた彼も、彼が信じたボクも、そんなボクを好きになってくれたファンの人たちも、ぜんぶです。それだけは……嫌でした。その時、ボクは、自分にとって大切に思えるものが……彼以外にこんなにも増えていたことに気づかされました。それに気づけたからこそ、ボクは今でもここにいるんでしょうね」
「後悔……してない?」
幸子さんが肩をすくめる。
「もちろん、してますよ。彼にもっと教えてもらいたいことがあったし、もっと一緒にやりたいことだってありました。でも、結局はいつお別れしても後悔することに変わりはなかったって思います。一年後でも、五年後でも、ボクは同じことを言ってたでしょうね。何で今なんですか、って」
「辛い……?」
「それはもう。あの頃は毎日、ぐすぐす泣いてました。正直、今でも辛くないと言えば嘘になりますね」
ですけど、と幸子さんは少し間をおいて。
「当時は彼がそばにいることが、世界の常識でありすべてだと思っていました。私が歩むアイドルの道から彼がいなくなった時、その道は永遠に閉ざされると思っていたんです。だけど、そうじゃなかった。誤解してほしくないのは、ボクにとって、今でも彼は大切な人であり、その想いは少しも色褪せてないってことです。もしかすると残酷に聞こえるかもしれませんけど……人は、そばに大切な人がいなくなっても、生きていけるんです」
いつの間にか、幸子さんの手が、私の手に重ねられてる。
私の手の甲にきざまれた傷あとを、指先でそっとなでてくれる。
「雪美ちゃんは、泣きたくなるほど、後悔したことってありますか?」
私の視線は、幸子さんの隣……開かれた雑誌へと。
桜並木で、私とペロが駆け回る一瞬を捉えた写真。
最終回を前に終わってしまった……第十一回目の連載ページ。
私……どうして……アイドルでいることを投げ出してしまったんだろう……。
「幸子、そろそろだ。準備はいいか?」
背後で扉が開いて、プロデューサーさんが顔を出す。
「はい、すぐ行きます」
部屋から立ち去る前に、幸子さんは、私の両肩に手を置いた。
「ボクは、これからもアイドルを続けます。大切な彼がそばにいたって、いなくたって関係なく、世界で一番のアイドルになってみせます。そして、胸を張って、ボクは幸せだって叫んでやるんです。ボクが大切に思う人たちは、そんなボクの姿を、きっと笑顔で祝福してくれるでしょうから」
私は……なにも言えなかった。
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