過去ログ - 【モバマス】「こんなにも幸せな傷あと」【佐城雪美】
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20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2013/12/20(金) 22:27:23.98 ID:NFA4OfSv0
 別の日に、きれいなお花を持って、幸子さんが来てくれた。

「ペロちゃんのこと……残念でした……」

 幸子さん、ベッドのそばにひざまずいて……鼻をすすり上げた。

「本当はボク、ぜんぶ、最初から知ってたんです。騙して……ごめんなさい。こんなボクでも、雪美ちゃんの……みちしるべになれるんじゃないかって、思い上がったんです。でも……」

 幸子さん……私をじっと見て……口を押さえた。

「ボクはただ、雪美ちゃんを追いつめただけじゃないかって……」

 その目がうるんで……今にも、涙がこぼれ落ちてしまいそう。

「幸子さんの言葉に……私、勇気もらった。ありがとう……。そんな顔させちゃって、ごめんね……」

 私……布団の中から手を出して……顔の前にかざす。

 かさぶたになった傷あと、見てると……心が痛んだ。

 私のことを、敵みたいに見る、ペロの目、思い出すから……。

「私が……なにもできないから……ペロも……みんなも、苦しめた……」

「……そんなこと、言わないでください。自分が一番辛い時期に、見捨てずにそばにいてくれることが、どれだけ救いになるか。最期までペロちゃんの苦しみを受け止めてあげた雪美ちゃんのこと、誰も責めなんてしません」

「でも……ペロ……私のこと、嫌いになった……」

「確かに、ペロちゃんは、雪美ちゃんのことが分からなくなっていたかもしれません。でもそれは、いつかまた元気になるために、お薬の副作用に耐えて、病気と戦い続けたからです」

 幸子さんに……強く、手、握られた。

「ペロちゃんは、雪美ちゃんと出会えて嬉しかったはずです。その人生はきっと幸せでした。雪美ちゃんの手の甲に残るこの傷は、ペロちゃんが一番に辛くて苦しい時期に、逃げずにそばにいてあげた証です。雪美ちゃんがいなかったら、ペロちゃんは、誰とも苦しみを分かち合えずに、ひとりで苦しみ続けていたでしょう。これは雪美ちゃんたちが間違いなく家族だったという証明なんです」

 気がつくと……幸子さん、泣いちゃってた。

「幸子さんまで……どうして……泣くの?」

「人は……悲しい時、泣くものなんです。泣いていいんです。それなのに、一番傷ついてるはずの雪美ちゃんが泣こうとしないから、このボクが……世界一、慈悲深いボクがっ……代わりに、泣いてあげてるんです」

 幸子さん……服のそでで、ごしごしって目元をぬぐう。

「決めました。無理しないでって、言うつもりでいましたけど、やめます。今度のライブイベント、無理してでも参加してください。もしここで、アイドルとしての人生を手放したら、雪美ちゃんはきっとぜんぶ失ってしまいます。それがどれだけ価値あるものだったか、人はいつだって失ってから気づくんです。ペロちゃんと一緒に歩んできた道が、ペロちゃんがいなくなったら無価値になるなんて、そんな馬鹿げたこと、ボクは絶対に認めない。雪美ちゃんだけが、その道を価値あるものに変えられるんです!」


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