過去ログ - 雪歩「ラヴェルのボレロと缶コーヒー」
1- 20
1: ◆K8xLCj98/Y[saga]
2013/12/24(火) 23:56:44.63 ID:jff72Nth0

 お仕事が終わって事務所を出て、もう2時間は経ったでしょうか。
 私は未だに、ひとりであの人を待っています。

「……はぁ」

 真ちゃん、まだお仕事が終わらないのかなぁ。
 すっごく嬉しくて、待ち合わせ場所に1時間も早く来てしまったから……自業自得、だと思います。

 21時。冷たい風をコートでしのぎました。
 22時。首元をあたためようと、マフラーをつけました。
 23時……まだ、来ません。


SSWiki : ss.vip2ch.com



2: ◆K8xLCj98/Y[saga]
2013/12/24(火) 23:57:30.91 ID:jff72Nth0

「ジュースでも買おうかな」

 100円玉で買えるぬくもり。
 あるアーティストは自分の歌の中で、そのセンテンスでホットコーヒーを表現したそうです。
以下略



3: ◆K8xLCj98/Y[saga]
2013/12/24(火) 23:59:21.60 ID:jff72Nth0

 ブラックの缶コーヒーを飲めるようになったのはつい最近。
 真ちゃんの趣味です。

 無糖どころかカフェオレすら飲めなかった私も、いつしかコーヒーを好きになっていきました。
以下略



4: ◆K8xLCj98/Y[saga]
2013/12/25(水) 00:00:24.38 ID:R+XlQCg50

 メッセージは未読のまま。30分前にした電話も、留守番電話でした。
 遅れる、という連絡もないから……少し不安になります。

 デパート横の街頭ビジョンから延々とリピートされているクラシック曲。
以下略



5: ◆K8xLCj98/Y[saga]
2013/12/25(水) 00:01:25.87 ID:R+XlQCg50

 いつかお父さんがプレゼントしてくれた銀の腕時計は、今の時間が日付の変わる30分前だということを伝えてくれました。

「……電話、しちゃおうかな」

以下略



6: ◆K8xLCj98/Y[saga]
2013/12/25(水) 00:02:48.56 ID:R+XlQCg50

「…………でもずっと電話が来ない、ってことは」

 忙しいんだろうな。
 そんな時に電話をするのも、悪いなぁ。
以下略



7: ◆K8xLCj98/Y[saga]
2013/12/25(水) 00:03:28.62 ID:R+XlQCg50

『もしもしー? どうした雪歩』

 ……プロデューサーの。

以下略



8: ◆K8xLCj98/Y[saga]
2013/12/25(水) 00:04:18.50 ID:R+XlQCg50

「その……今日、真ちゃんと待ち合わせをしていたんですけど、まだ……来なくて」

『あー、そっか。連絡してなかったな。真、今日の収録が長引いちゃってさ。終わったのがさっきなんだよ』

以下略



9: ◆K8xLCj98/Y[saga]
2013/12/25(水) 00:07:46.95 ID:R+XlQCg50

『……だってもう、日付が変わっちゃうぞ。今夜はどうするんだ』

「本当は22時にご飯を食べて、スイーツを食べて……ビジネスホテルに泊まる予定でした」

以下略



10: ◆K8xLCj98/Y[saga]
2013/12/25(水) 00:09:36.72 ID:R+XlQCg50

「……すみません、プロデューサー。真ちゃんが来たら連絡します」

『分かった。俺も真に電話してみるよ』

以下略



11: ◆K8xLCj98/Y[saga]
2013/12/25(水) 00:16:13.84 ID:R+XlQCg50

 日付が変わる20分前。まだボレロは流れていて、その単調なリズムが一層と私の不安をかきたてていきました。

「……大丈夫、かな」

以下略



12: ◆K8xLCj98/Y[saga]
2013/12/25(水) 00:22:09.72 ID:R+XlQCg50

 ポケットから缶コーヒーを取り出すと、さっきよりもずっとぬるくなっていました。
 そろそろ飲んじゃおうかな。

 ……真ちゃんも、まだ来てくれない。
以下略



13: ◆K8xLCj98/Y[saga]
2013/12/25(水) 00:26:47.38 ID:R+XlQCg50

 ホワイトクリスマスだね。
 この間収録が終わった単発ドラマで、私の演じるヒロインが何度も言っていた台詞です。

 実際に雪が降れば、素敵なクリスマスになるんだけどなぁ。
以下略



14: ◆K8xLCj98/Y[saga]
2013/12/25(水) 00:31:31.91 ID:R+XlQCg50

 千早ちゃんに、ボレロのストーリーを聞いたことがあります。
 酒場の舞台で足慣らしをしていた踊り子が、だんだん振りを大きくすると、
 無関心だった周りのお客さんが興味を持ちだして、みんなで一緒に踊る。

以下略



15: ◆K8xLCj98/Y[saga]
2013/12/25(水) 00:34:00.99 ID:R+XlQCg50

 プロデューサーがいたから、アイドルの仲間がいたから。
 たくさんのファンの期待に応えようとお仕事が出来る。

 それってとっても、幸せなことなんだな……って、思うんです。
以下略



16: ◆K8xLCj98/Y[saga]
2013/12/25(水) 00:37:56.67 ID:R+XlQCg50

 2時間以上延々と流れていたのに、どうして急に止まっちゃったんだろう?
 そう思って、真後ろの街頭ビジョンの方向を向いた瞬間、でした。

「……あ」
以下略



17: ◆K8xLCj98/Y[saga]
2013/12/25(水) 00:39:46.55 ID:R+XlQCg50

「真ちゃん!」

「雪歩……ごめん! こんなに遅れちゃって」

以下略



18: ◆K8xLCj98/Y[saga]
2013/12/25(水) 00:41:06.25 ID:R+XlQCg50

「でも……間に合って、良かった」

「え?」

以下略



19: ◆K8xLCj98/Y[saga]
2013/12/25(水) 00:43:00.96 ID:R+XlQCg50

「わわっ、日付が変わっちゃう」

 真ちゃんは黒いデジタルの腕時計を見て、慌てて鞄から赤い包装紙で包まれた箱を取り出してきました。

以下略



20: ◆K8xLCj98/Y[saga]
2013/12/25(水) 00:45:07.94 ID:R+XlQCg50

 ガラスの中には、かわいいサンタクロースとトナカイさんがいました。
 楽しく踊っているのかな。ボレロの踊り子みたいに。

「……スノードーム?」
以下略



21: ◆K8xLCj98/Y[saga]
2013/12/25(水) 00:48:09.94 ID:R+XlQCg50

 そう言えば秋ぐらいに、おそろいのアクセサリーが欲しいねって言ったなぁ。
 覚えててくれたんだ、真ちゃん。

「……ありがとう、ありがとう。真ちゃん」
以下略



27Res/11.85 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice