10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/12/26(木) 03:00:55.79 ID:254l1QJ3o
【幸子 Aランクエンド】
『……よかったのか? まだ、俺でさ』
隣を歩く幸子に、そう声をかける。
いつもなら、ふふんと鼻を鳴らして俺に言うだろう。
ボクはカワイイですから、と。だが、今日はそうではなかった。
「いいんです。こんなボクには、プロデューサーさんが一番ですから」
輿水幸子は今日、Aランクの称号を手に入れた。
アイドルなら誰もが夢見る栄光へ、彼女は辿り着いた。
新設のこのプロダクションには、その日から電話が鳴り止まなかった。
輿水幸子をこちらのプロダクションに移籍させないか。
一度も交流がなかった大手プロダクションからもそう声がかかった。
俺には一生かかっても稼げないであろう金額を提示されていた。
俺なんかよりずっと腕のいいプロデューサーをつけると。
だが、輿水幸子は一度も首を縦に振ることはなかった。
ボクはお金を稼ぐためにアイドルになったわけじゃないんです、と。
どこまでも幸子に有利な条件を出されても、それは揺らがなかった。
「ボクは、このプロダクションにいるから、ボクなんですよ」
「……そして、プロデューサーさん、皆さんがいるから、なんです」
「ボクじゃなくなったボクなんて、カワイくないボクみたいなものですよ」
でしょう? いつものように、自信たっぷりにそう笑ってくれた。
ああ。俺は一瞬でも、なんてことを考えていたんだろうと自分を責めた。
ただ上だけを見続ける彼女に、そもそも、トップなんて概念は存在しないのだ。
『ごめん。俺さ、まだまだ幸子のために頑張るからさ。よろしくな』
「ええ。さ、ボクのカワイさを伝えに行きましょう! 一分一秒でも惜しいです」
「ボクと出会えたのはプロデューサーさんの一生分の幸運ですよ! それに―――――――」
「――――――プロデューサーさんと出会えたのも、ボクの一生分の幸運ですから!」
おわり
107Res/46.55 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。