過去ログ - モバP「お題でSS」
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28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/12/26(木) 11:50:41.66 ID:254l1QJ3o

【酔いどれ文香】

鷺沢文香というアイドルがいる。

今日は彼女とご飯を食べに行く、という約束をしている。
普段の労いの意味も込めて。文香はどのような料理が好みなのだろうか。
ああ、先に趣味趣向を聞いておくべきだったか、と思い、ふと腕時計で時刻を確認してみた。

まずい。仕事が長引いたせいもあり三十分近く待たせている。

優しい文香のことだ、俺が事故にあったとでも思っているかもしれない。
今は冬だ。寒い。それにあの容姿だ。声をかけられてもおかしくないし、危ない。
そう思った俺は、急いで文香にメールした。どこか適当な店に入っていてくれないか、と。

「……わかりました。ゆっくりいらしてください。そうします」

と記載された返事を確認し、とりあえず安堵した。
とにかく急ごう。約束をして待たせてしまうだなんて申し訳ない。
待ち合わせ場所まで来てみたら、やはり彼女はいない。どこにいるのだろう?

「……今、ええと、通りを曲がったところの……どこでしょうか?」

道筋だけを記載したメールが届いた。うん? どうにもおかしい。
博識であり、普段の言動も正確な文香のメールにしては違和感を覚える。
指示に従って息を切らし、走って行くと、そこにあるのは……これは……なんだろう。

『遅れてごめん、その、ええと―――』

「……大丈夫です。夕方で終わるだったお仕事が長引いたんですよね? ふふっ……」

「……これ? ですか、ジュースです。ジュース……気づいたときには、三十分近く過ぎていて……」

「社長に急いで行ってあげなさい、と言われて……ちひろさんにはそれで怒られていたりして……」

ふふふ。ぱらぱらとページを捲りながら文香は笑っている。ジュース?
それにしてはあまりに顔が赤くないだろうか。ジュース。うん、そうだよね。ジュースだね。
何を読んでいるんだろう、と思って表紙を見てみて、彼女の言動と合わせて俺はなんとなく、思った。

「……でも、お財布を持ってくるのを忘れていた……とか……」

急いでバッグとポケットを探ってみる。本当だ。ない。





探偵はBARにいた。

                                            おわり


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