過去ログ - モバP「お題でSS」
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71: ◆IpxC/P/Kzg[saga]
2013/12/26(木) 14:27:39.36 ID:254l1QJ3o

「今日は、楽しかったですっ……ふふっ。また、あそこに一緒に行きましょうね?」

また? 藍子とその店に行ったのは、今日がはじめてだったはずなのだが。
俺の記憶違いなら申し訳ないが、どうもそうではない気がする。
さきほどのことも気になり、携帯の写真をチェックしていく。

「………………あ。もしかしたら、忘れものをしちゃったかもしれません」

『そっか。なら俺が取ってこようか? 何を忘れてきたんだ?』

「あ、いえ……よかったら、一緒に探してくれませんか?」

わかった、と藍子の話にも相槌を打ちながら歩いてもう一度家に戻ってきた。
ゆっくりと藍子の口数が少なくなってきていることに気がつかなかった。
玄関を開け、中に入り、携帯の街の風景を撮ったフォルダを開いた。

そして、ここも、だった。

俺は急に怖くなり、後ろを振り向けなかった。
やはり勘違いではなかった。俺がおかしいわけではなかった。
いつしか、そう、いつからか、俺の藍子への愛情は恐怖へと変わっていたのだ。

「…………」

ばたんとドアは閉じられる。後ろから鍵をかけた音がする。
金具のかかる音もした。どの風景のどの写真の藍子もじっと俺を見つめていた。
木の影、電柱、通行人の中、事務所の窓から。藍子。藍子。藍子。どこにもいない写真は無かった。

「あの頃のPさんは、どこか、探してくれませんか?」





振り向いた彼女も、画面の中の彼女も、ただ、静かに俺を見つめていた。

                                     おわり


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