過去ログ - 一方通行「痴女ファッションと垣根帝督と俺」 -SS速報VIP

過去ログ - 一方通行「痴女ファッションと垣根帝督と俺」

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68: ◆wIGwbeMIJg[saga]
2013/12/28(土) 21:58:06.53 ID:KYcqqn0u0
「一方通行………、垣根、帝督………、」

「……おい。俺は守るなんて言ってねぇからな？死にたきゃ勝手に死ね。生きたきゃ勝手に生きろ」

「な、何だ……もしかして根に持ってるのか？あの、バレーボールのこと」

「…ムカついた。次会ったらシバく」

「……くす。すまなかったな」

こぼれるような笑みを湛えたオティヌスの視線が自身の視線と交わるのを予感した垣根が、物凄い速さであらぬ方向に視線を投げた。
それを見て一層笑顔を深くしたオティヌスを横目に見る垣根の口の間から、一つ舌打ちの音が漏れる。

「つゥか、どけ。いつまで乗ってンだ」

上に乗ったオティヌスを乱暴な手つきで払いのけた一方通行が起き上がる。

「まァ、そォいう事だ。もうオマエを縛めるモンは何もねェ。思う存分、好きなように生きろ」

「………」

そう言って、一方通行が手を差し伸べた。
オティヌスはその手の意味を理解するのに少しかかって、ようやく尻餅をついた自分に手を貸そうとしているのだと気付く。

一方通行は何て事もないような調子で「守ってやる」と宣言したが、それがどれほどの事なのかをきちんと把握しているのだろうか。

魔神とは、野に放たれたと知れれば、それだけで科学的なものにしろ魔術的なものにしろ各国から『兵力』が投入されるような生ける災厄だ。
……実態はさておき、少なくとも世間一般にはそう思われている事だろう。
それに手を貸すなど、世界を敵に回すも同義だ。

一方通行の心中などオティヌスには知る由もないが、だからこそそれに甘える訳にはいかない。
差し伸べられた手を握る事で一方通行が不幸になる事があってはならない。

だから、一方通行の厚意は一蹴するべきだ。
酷く名残惜しくて、その温かみに触れてみたいと沸き立つ心に懸命に蓋をし、
それでも伸びてしまう手を必死で自制して、なんとか寸前で一方通行の手をはたいた。

「余計なお世話だ、馬鹿」

それが最後だった。
眩い光に空間が包まれ、その輪郭を失っていく。
大地の亀裂が少年達と少女を別つ瞬間、少女は寂しそうに笑っていた。

これで良い。
少しだけでも、人肌の温かみを知れただけ満足だ。
そう言い聞かせるような笑み。
そんなオティヌスを見る一方通行と垣根帝督の表情は、遂に最後まで伺い知る事は出来なかった。

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