過去ログ - 一方通行「痴女ファッションと垣根帝督と俺」 -SS速報VIP

過去ログ - 一方通行「痴女ファッションと垣根帝督と俺」

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93: ◆wIGwbeMIJg[saga]
2013/12/28(土) 22:45:18.26 ID:/cxA2EHB0
オティヌスは、窓のないビル、その屋上の淵に一人腰掛けていた。
…否。一人ではない。その背後に、水の中に浮くように中空を漂う人間がいた。

「随分勝手をしてくれたな」

「…………」

「『プラン』への影響は甚大だ。また軌道修正の方法を組み直さなくてはならない」

「……消しに来たのか？この私を」

「消すという程の事でもないさ。……ただ、『回収』をしに来ただけだ」

瞬間。
得体の知れない何かが吹き出された。
オティヌスは振り向こうともしなかった。代わりに、片方しかない瞳をそっと閉じる。

末路など最初から想像はついていた。ただ、それが早いか遅いかの違いでしかない。
ここで殺される。若しくは臓器を切り取って『生きているだけ』の何かに変えられる事だろう。
だったらもう逃げも隠れもしない。どうせ結果は同じなら、早いうちに諦めてしまった方が、きっと楽だ。

やはり最後まで『生きる』という意味は分からなかった。
あの少年が教えようとしてくれた、希望という概念は遠い存在のままだった。
もし、叶うなら。
もう一度だけ、温かみというものに触れたかった。

それだけ思って、オティヌスは静かに

「言っただろォが」

「え………？」

「守ってやるって言っただろォが。早速放棄しようとしてンじゃねェぞクソ野郎」

多分。
それが、少女が世界で一番求めた、ちっぽけな希望の形だった。

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