16:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/01(水) 20:52:05.74 ID:mMrPH74Do
「でも泉の言う事と大体同じよ。この年で親元離れてるけど、Pちゃんがいるなら寂しくはないみたい。最初は違ったけどね」
最初というのは恐らくデビュー前後の時だろう。
あの時は俺も不慣れであったし、彼女たちも全く別世界へ踏み込んだばかりだったから失敗も多くて不安だったに違いない。
「……なんか恥ずかしいな、こういうの。でも本当だよ。少なくとも、後ろは見なくて大丈夫だから」
時に親しく、時に遠く。
俺は今までありとあらゆる手段を以て出来る限りの手助けを行ってきた。
時に見逃すことはあるけれど、時に間違うこともあるけれど。
そうして、彼女たちはいつのまにかこんなに強くなったのだ。
「……最近つまらん顔してたんは、なんで?」
過去を思い出していると、ふと亜子の目が鋭くなった。帽子の奥から見える彼女の顔にいつもの色はない。
「Pちゃんが親心を持ってくれてるからアタシらも寂しくなくやっていけるんよ。でもそんな顔されたら、アタシらはどうすればええの?」
泉が亜子をと俺を交互に見る。やってしまった、というよりも何かを見定めるような視線だ。
「……勘の良い子なら、って話だったけど、まあお前たちなら当然だよな」
俺はラーメンのスープに視線を落とす。僅かな油分が水面に模様を描いている。
「はは、悪いな。ちょっと疲れが溜まってたらしい。ちひろさんにも言われた」
何だか無性に喉が渇いたので咄嗟に水を飲み、笑って答える。それでも亜子の瞳に変わりは訪れていなかった。
「いつからだろうね? 何というか、Pの気持ちが素っ気無くなったんだ。その時からさくらと亜子と一緒に、なんでだろう、って考えてた」
カリン、とコップの中の氷が転がる。店内を明るく彩る音楽は、平日でも訪れる人達を祝福しているようだった。
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