35: ◆o1H7m0ryfo[saga]
2014/01/05(日) 02:11:35.10 ID:vTLwVfM7o
「ああ」男は少し驚いたようだった。「今日ははじめから話してくれるんだ」
サービスのつもりで、少し微笑んでやる。
「この辺りに用でもあったの?」
不思議なことに、口を出た言葉は敬語ではなかった。
知って間もない男にそういう口のきき方をするのは、わたしには珍しいことだったはずだ。
なぜか嬉しそうな表情で、「うん」と男は頷いた。
「語学の勉強をしてるんだ。その先生がこの近くにいてね」
「今から行くところだった?」
「いいや、帰りだよ」
「そう」
それは良かった、と思った。都合が良い。
昨日の不安定な気持ちが尾を引いているから、気を紛らわしたかったのだ。
「良かったら、この街のこと案内してくれないかな」
わたしの頼みに、彼は「なんだそれ」と笑った後に了承した。
無理のない、自然な笑い声だった。
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