過去ログ - サクラ「誰かを選ぶなんて……!」
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3:オータ ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2014/01/04(土) 09:14:36.27 ID:CQ9q8VX20
そして、今まさに私は結論を出せなかった思考に決断を迫られている。あの時と決定的に違うのは、カカシ先生までが敵の手中にあるということだ。ボロ雑巾のように、なんて表現がぴったり当てはまってしまうほど、先生は痛め付けられていた。緑色のベストは踏みにじられ足跡だらけになり、辺りの雑草は血を浴び赤く染まっている。おかしな方向に伸びる手足はピクリとも動かず、まばたきがなかったら死んでいるように見えた。

それに比べたら私なんて全然何ともない筈なのに、身体中が痛くてプライドもズタズタで涙が止まらない。ナルトは何を押さえ込んでいるのかは分からないけど、もう限界だと言わんばかりに目を血走らせていた。サスケ君も、あんなに怖い顔をしているのは見たことがない。

受け入れがたい現実を目の当たりにして、思考が停止しそうな私の耳に男の楽しげな声が響く。仲間を一人犠牲にしろって言ってるだけだろ、早く選ばないと全員こいつのようになるぞ、とカカシ先生はまた足蹴にされた。なぜこんなことになってしまったのだろう。誰か一人を選ばせる事が、こいつにとって何か利益があるのだろうか。ニヤニヤと下卑な笑いを浮かべる顔を見れば、目的なんてないのだと分かった。

私がくの一だから、そしてどうしようもなく弱いから馬鹿にされているのだろう。実際、私だけは拘束も何もされていなかった。悩んでいる間にも先生は暴行を加えられ、頭から血を流していた。銀色の髪は真っ赤に染まり、いつもは眠そうな右目にも血液が流れ込んで、苦しげに閉じられた目が血の涙を流しているように見える。誰かを差し出すなんて無理だ。でも、このまま答えを出さないでいれば、先生はなぶり殺しにされてしまう。

追い詰められた私は、何も言えず頭をかきむしった。このまま地面に頭を打ち付けて、死んでしまいたい衝動にかられる。それでもどうしたらみんなを助けられるか、思考をやめる訳にはいかなかった。肩で呼吸をしながら、私はみんなの顔を見る。

サスケ君は目を薄く開き青筋を立て、ナルトは逆に目を剥いて、カカシ先生は……何か呟いていた。何とか聞き取ろうと耳を傾けると、先生は必死に声を張り上げた。

「俺を選べ」

低く掠れた叫び声は深い諦めで曇り、全員助かるのは無理だという現実を突きつけられた。血を吐くような、と言うか実際に血を吐きながら叫んだ声はナルトたちにも聞こえたらしく、伝染病のように二人も同じ言葉を口にした。

俺にしろ!他の奴は選ぶな!誰が誰の声か認識する事も出来ず、頭は余計に混乱した。そんな様子を見て、敵の忍者はさも滑稽だと言わんばかりに、腹を抱えて笑い出した。

もういっそ、私も含めた全員選んで、みんなで死ぬなんて選択肢があってもいいんじゃないかと、私は自暴自棄になった。だけどそのお陰で残された可能性に気がついた。ゲスな笑い声をあげるコイツなら、この提案を飲むかもしれない。出来るだけ悪いことは考えないようにし、声が震えないよう勢いよく息を吐き出すと、すっかり体温を失った唇を動かした。

「……その一人、私じゃ駄目なの?」

自己犠牲の精神はお気に召さなかったのか、それとも利用価値の低い私では不満なのか、男は明らかに不愉快そうな顔をした。コイツが血継限界を狙っているとは思えないが、二人は写輪眼を持っていて私には何もないし、女性の魅力としても欠けるだろう。真剣に自分の長所を考え込む私をよそに、ナルト達は本当に意外だったのか、怒りや悲しみは消え失せ全員目を見開いていた。

真っ先にナルトが馬鹿なことはやめろと騒ぎ始めた。サスケ君もナルトと同じような事を叫んでいる。変態男が口角を上げるのを見て、カカシ先生は青ざめていた。ナルト達に騒ぐなと訴えているが、二人は聞き入れない。

やっと好転してきたと思える事態に、一筋の光明をと言うより底無し沼に足をとられたような感じだった。心底楽しそうに笑みを浮かべ、男は条件を飲んだ。何をされるのかは考えたくも無かったが、とりあえずお先真っ暗と言ったところか。

身動きのとれないみんなを残し、叫び声に後ろ髪を引かれながら、闇の中に足を踏み出した。


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