6: ◆TFz60grgq2[saga sage]
2014/01/05(日) 21:39:00.40 ID:8M1w9cB8o
――――よろしいんですか?
「困ってるんでしょ?いいよそのくらい」
「俺はシャーペンの後ろの奴使うから気にしないで」
右隣にいた金髪の彼が差し出してくれた消しゴムはまだ新品同然の様子で、それは彼の受験への努力を表しているように思え
このことがますます気がかりになりました
――――見ず知らずの人に迷惑をかけるわけにはいけません
「いいよ、どうせ消しゴム有っても無くても結果は変わらないし」
「さっきの君の顔、凄かったぜ」
「『どうしよう、ちょっぴりおしっこ漏らしちゃったよぅ……』みたいな顔してた」
沈黙
「悪い!悪かったよ!つい、連れのこと思い出しちゃって……」
「あ、そうそう、俺もここん中に知り合いいないんだよ、みんな他の教室でさ」
「君もいないんだろ?同じ中学の人」
「知り合いいない同士のよしみってことで受け取ってくれよ」
「さっきも言ったけど、俺は大丈夫だから」
と、よく喋る彼は私に笑顔を向けながら遠慮しました
彼の微笑み、向けられる遠慮、迫る時間の流れに私は逆らえず、突きだそうとした右手を机の上に戻して、二度目のチャイムが鳴らされるのを待つ
教室中に、私と彼との間には自然と静寂が訪れ、それぞれの世界に身を投じる
これが、私と彼との出会いでした
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