過去ログ - ありす・イン・シンデレラワールド
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22:チョッキを着たウサギ
2014/01/11(土) 09:30:57.44 ID:Gcj069EQ0
 泣き腫らした目のありすを連れて灯は事務所へと戻ってきていた。他の者に謝ろうと思ったのだが無人になっていることに驚く。鍵も掛けずに不用心と思いながら辺りを見渡すが暗くなっていく事務所に本当に人っ子一人存在していなかった。
 考えを切り替えて灯はありすの肩に手を置く。
「それじゃ、良いかな?」
 ありすの頬が紅潮する。そしてありすは更衣室へと入っていった。灯は紅茶を淹れながら自分のデスクで彼女が出てくるのを待った。静かな室内で扉が開かれる音でも鮮明に響かれる。
 灯の元まで自分の脚でやって来た少女の姿に灯は息を飲んだ。
 ありす――肩を出した深い深い紺色のクラシカルなドレスにはラインストーンを散りばめてまるで宇宙に光る星々を彷彿とさせる。静謐さの中に光る情熱を秘めていた。星形のアクセサリーや真珠も所々に配置して可愛らしさと神秘的な雰囲気が同居している彼女らしい衣装を身に纏う。
「こうやってドレスを着ることが出来て、本当にアイドルになれた気がします」スカートの裾を軽く持ち上げてありすが微笑む。
「そうだね。でもステージに上がってこそのアイドルだよ。明日の"Hallo IDOL"は全力を尽くそう、ありすちゃんの全力を出し切ってくれ。テレビの向こうにいるみんなに受け止めてもらうんだ。絶対に支えて上げるから!」灯が拳を握って見せる。
 ありすが緩んでいる頬を引き締めて初めての大舞台、それでも表現者としては小さくも彼女にとっては大きな一歩となるステージへと臨むアイドルの顔を見せる。
「あの……」ありすはうつむき上目遣いで灯を見ながら、「一つお願いがあるんですけど」
「何でも言って」
「それじゃあ……」気恥ずかしさを最高潮にしたありすは震える声で「『可愛い』って……言ってもえませんか?」
(ありすちゃん、いきなり性格変わった?)と、口に出来ない灯は一瞬面食らうが彼女の頭に手を伸ばした。
「一番最初に褒めるべきだった。遅れたけどとっても可愛いよ、本心でそう思う。今度の衣装は一緒に考えようか……」
 大きな手でありすの頭を優しく撫でていくとありすは口元をむずむずと歪めてくすぐったそうにしていき我慢の限界で破顔一笑、子供らしい飾らない笑顔を見せる。
「ふふ、えへへ……私、色々と答えを急ぎ過ぎていました。まるで迷子ですね」頭を撫でられながらくすぐったそうにしながら言葉を綴っていく。「でももう少し迷子でいいです」
「迷子? でも迷子でいいの?」
「ええ。迷子でも見つけられる……ううん、迷ったからこそ見つけられることがあるって気付けましたから」
「そうだよね。簡単に『答え』に辿り着けるものじゃない。だからこそ一緒に……」灯は相手の手を取って頷く。「答え――トップアイドルを目指して頑張っていこう」
「はいっ!」
 子供らしさを少なくしてありすは彼女らしい答えを示した。


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