957: ◆HYvP9smHgsVn[saga]
2014/05/23(金) 18:23:52.56 ID:tNQIWLdC0
――――それからしばらくの間、僕はゆまの家でお世話になった。
ゆまの家で暮らしていて分かったのだが、どうやら僕のボディは何時の間にか通常の生物のそれになっていたらしい。
つまり動体センサーや有機物の分解機能なんて持っていない、普通の生き物と大差ない身体という訳だ。
こんな事あり得ないのだけど……何故か、別に不思議でもなんでもない気がする。訳が分からない。
尤も認識阻害システムは機能しているので魔法少女の素質がない子には、相変わらず僕の姿は見えない。
それに契約システムも生きている。
このシステムは、願いを叶える少女達が希望の高みに駆け上る際のエネルギーを用いて願いを叶える。
つまり僕の身体には感情エネルギーの変換機構が備わっており、そのエネルギーをちょっと横領すれば、
活動エネルギーにも使える訳だ。
まぁ、魔法少女なんて作ったら衛星で僕の位置情報がバレてしまうだろうから、やる訳にはいかないけど。
そんな訳で僕は、ゆまと共に日々を過ごした。
昼間はゆまが学校に行くので僕は家で寝て過ごし、夜は帰ってきたゆまとお喋りをする。
偶に母親がゆまを虐待しようとしたら僕の出番。幾つか助言させてもらう。
母親の理解不能な理屈のせいで助言が功を成したのは三回に一回ぐらいなのだけど……無いよりはマシだ。
……ゆまにとって、この暮らしは幸せとは言えないだろう。
僕としては、さっさと警察に通報して邪魔な母親を排除してしまえばいいのにと思う。勿論、そう助言した。
そうしたらゆまは、珍しくとても怒った。
ママと離れ離れになりたくない、何時か優しいママが戻ってきてくれる……と。
自分に害を成す者が傍に居る事を良しとする……僕には理解できない考えだ。
けれどもそれがゆまの選択なら、僕はこれ以上口を出すまい。
そもそも彼女が虐待されようと、どれだけ傷を負おうと……例え死のうと、僕には関係ない。
此処での暮らしは順風満帆。平和で穏やかな隠居生活が送れて、僕は満足だ。
あの時が来るまで、僕はそう信じて疑わなかった。
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