11:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/28(火) 22:45:42.54 ID:4dDXRU7No
かたかた、と乾いた音が室内のテレビ音を装飾する。全く味気のない音は不規則に声を彩り、不確定な時を刻んだ。
本来向けるべき昨日に意識を傾けつつも俺と翠の事についてああだこうだと考えながら作業していると、気がつけば記録作業が終わっていることに気づいた。
「……まあ、こんなもんか」
そもそも昨日一日分だけの作業なので、決して数時間もかかるものではないのが幸いしたか、俺の目を疲労させること無く完成することが出来たのである。
パソコンの右下に表示されている時計を確認すると、やり始めてから十五分程度かかったところだろうか、という頃合いであった。
単純に作業量が少なかったのか、それとも俺の仕事能力が増しているのかは定かではないが、俺の予想を超えていたのは間違いない。
せっかくの休日を夜遅くまで起きて仕事などやってられないと踏んでの行動はどうやら早計だったらしい。
俺以外誰もいない部屋で相変わらず鳴り続けているテレビをようやく消すと、自然と体を伸ばてしまった。
ひと仕事終えた人間の特権というべきだろうか、ん、ん、と声を小さく漏らしながら両手を上げて伸びる仕草はもはや習慣だろう。
ふと横を見れば、大きな窓が見える。
あの決戦前夜からも、翠が初めて俺の部屋に来た日からも、俺がここに入居した日からも変わらない鈍い窓。
時を刻んでもそこにあり続ける小汚い窓から見える景色は今日も代わり映えはしない。
まるで進むのを拒否しているかのようなその窓を眺めていると、突然世界が変わったように思えた。
――途端、水を打ったような静けさが周囲を包んだのである。
最近購入した時計の針音が影から現れ、俺の僅かな動きに感応して出る椅子の軋みが主旋律を奏でるこの部屋の窓に、過去の俺の姿がそっと見えたような気がするのだ。
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