12:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/28(火) 22:47:06.07 ID:4dDXRU7No
最初の頃は、毎日家に帰って勉強ばかりしていた。
何も知らない世界に飛び込む俺に、精一杯知ってもらおうと用意してくれたテキストを必死に頭に詰め込んでは翌日間違えてしまったり、言葉遣いも正しくなかった俺に、わざわざちひろさんがビジネス用語本を渡してくれたり。
その当時はまだ学生気分が抜けてなかったのは否定しないが、翠が来てからは本格的に営業を始めて、大きな目で見れば成功していた事も、細かい部分では失敗し続けて、時折相手方に呆れられたり、邪険にされたりすることも少なくはなかった。
そして初めてのライブやテレビなどの仕事が順調に行っていた矢先に、この部屋で翠は――。
「……ホント染まってきてるな、俺も」
あの時の景色は今でも記憶にこびりついている。思い出そうとすれば交わした言葉すら言えそうな気だってする程だ。
それだけ翠の本当の言葉が……本当の気持ちがひしひしと伝わってきて、それでいて初々しくて純粋な彼女の表情が、俺には愛おしく思えたものだ。
もうあの瞬間からかなりの時間が流れていた。
心身ともに成長し、翠はちょっとやそっとじゃ動じなくなって頼もしい反面、少し面白みがなくなったような気がする。
全く、あの時の翠と言えば色々な意味でハラハラさせてくれたものだ、と窓に映る俺を見て思った。
窓の俺よ、楽しくしているか?
ああ、そうか、あの年の今頃といえば、まだ翠に出会っていなかったな。
窓の俺よ、直感を信じて突き進め。
そうすれば、本当に良いアイドルと出会えるはずだから。
窓の俺よ、お前の目から見て俺は楽しく見えているか?
窓の俺よ、窓の俺よ――。
取り留めもない時間旅行は、ふとした衝撃音によって終了となる。
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