18:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/28(火) 22:56:20.02 ID:4dDXRU7No
「思い出すとさ、昔みたいなことはしなくなったよな」
右隣にいる翠に近い俺の右手を広げて見つめてみる。
翠が辛い時や翠が難しい仕事を終えた時、そして翠が望む時、この右手は彼女に触れた。
そうすることで、彼女が喜びを感じてくれたからだ。
触れたい、近づきたい。
一緒になりたい。
そのような莫大な感情を、かつてこの手を通じて発散させていた。
「……私はアイドルで、あの子達の先輩ですから」
翠は広げた俺の手を見る。
一年目、翠は純粋な心の中に恋があることを知った。
そしてそれを壊したくないが故に、彼女は無理をしてしまった。
だがそれを乗り切れば、彼女に恋慕の幸福と喜びという感情が両手で持ちきれない程与えられたのだ。
お互いの手が触れ髪が触れ、また思いが触れることで、翠は一体どれほどの感情を心の中で爆発させてきたのだろうか。
「まあ、確かにそうだが……」
しかし、それからはどうだろうか。
後輩が出てきたことで、否応なくそういった行動は慎まざるを得なくなった。
当然だが俺がそう言った訳ではない。
翠の考える先輩像が、自発的に制限をかけたのである。
翠の中にひそかに残る後悔があるとするならば、それはイフの世界への羨望というものだろうか。
好きになんてならなければ。
ただの仕事仲間と切って捨てられていたならば。
――もしもそうなっていたならば、苦しむ事もなかったのに!
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