過去ログ - モバP「赤色の恋心」
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21:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/28(火) 23:01:01.84 ID:4dDXRU7No


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 寂れたドアを解錠して入ると、向かい側の窓から来る夕日が目を眩ませた。
 強さといえば、扉からだと自分の指定席であるデスクが見えなくなる程である。


 事務所。
 俺の部屋から事務所までは電車で数駅、車なら更に早く到着できる程に短いため、あの部屋で長くくつろいでいたとしても夜に到着ということにはなりはしない。

 本来であれば今日はオフなので事務所に来る必要など全くないのだが、今日の事でやる気が出てきたのか、翠の希望で臨時でレッスンを入れることになったのだ。
 なので、こうして事務所に送りに来たという訳である。

「まだ時間があるな……」
 左腕の袖をまくると、銀色の時計が顕になる。

 急遽という話ではあったが、また近いうちにライブも控えているためトレーナーも快諾してくれていた。
 尤も、雇用者と被雇用者という関係にしては近すぎるから出来たのだろうが。


 ――空が、一際赤くなっていく。
 特に見たいテレビがある訳でもなく、俺と翠、たった二人だけが事務所で同じ空気を吸っていた。

 今日は後輩達はそれぞれオフだったり仕事だったりで事務所を空けている。
 同様にちひろさんもその後輩の付添で出かけているということらしい。
 事務所は当然鍵がかかっているが、合鍵は俺も所持しているので問題はなかった。


「……夕日、綺麗ですね」
 取り留めもない時間。
 翠は俺の机の後方、壁一面を伝っている窓の桟に手を置いて空を見上げた。

 数多の階段を上るだけあって、高い目線から夕日を迎えることができるこの事務所はそれなりに景色が良い。
 彼女にとってはもう何回も何回も、数えきれない程見ているはずなのだが、この景色だけは飽きないでよく見ている。





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