25:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/01/29(水) 21:38:38.77 ID:Y5VyRhna0
◇
この感覚は今迄にも何度か覚えがあった。
家族や親しい友達とどこかで楽しく遊んだり、欲しくて欲しくてしょうがなかったものが手に入ったり。
そんな夢を見た後には、それが夢の中の出来事であると認識できずに、
起きたその後もその幻想を本物の体験だと勘違いしてしまう。
そして、しばらくしてから「ああ、あれは夢なのだ」と気が付いて
その後は決まって、今の自分の惨めさと比較して、哀しくなって塞ぎ込んでしまうのだ。
今回はそれの、全く逆のパターンだった。
暗いワンルームの部屋の過呼吸気味の息が荒らいでいる。
汗で透けた服が肌にべったりとくっついている。
部屋の中とはいえ夜の冬の気温が身を包んでいるはずなのに
身体は内から燃えるように熱かった。
何か大切な物が消えてしまったかのような、深い喪失感を抱きながら、
ベッドの上のほむらは、焦点の定まらぬ目で壁を見つめていた。
砕けるソウルジェム、吹雪く花びら、少女の横顔。
つい先ほど体験した感覚は鮮明に蘇り、頭の中にこびり付いて離れない。
いま見ている部屋の景色の方こそ夢ではないかと錯覚する程に
少女が紫色の宝石を砕いた瞬間に感じた、死のイメージは現実感に溢れていた。
床に投げ出された鞄と胸の中途半端に解けたリボンが目に入る。
カーテンの隙間から覗く満月がそれを照らしていた。
ほむら(そうだ……)
さやかと志筑仁美の失恋の話をしてから別れた後、そのまま家に帰ったほむらは
少しだけ仮眠をとるつもりでYシャツのままベッドに横になり、そしてそのまま深い眠りに落ちてしまったのだ。
帰り道で夢の中の少女とは会ってなどいない。
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