67:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage saga]
2014/03/16(日) 21:06:17.01 ID:h1V5xIz/0
◇
仁美「……本日は少し遅れますので……ええ、申し訳ありませんが……はい、では失礼いたします」
画面をスライドする指の下で、携帯の通話表示が赤いオフ画面に切り替わる。
眉間にシワを寄せた表情でそれを丁寧に鞄にしまうと、仁美は窓際に位置する二人がけのソファに腰を深く沈めた。
仁美「……」
学校帰りの学生同士や家族連れが談笑を交わす大型百貨店のフードコート。
そのまばらな騒めきの中、仁美は決意めいた表情で、さやかが注文している商品を持って
席に戻ってくるのを静かに待っていた。
テーブルの上で組んだ手を見つめながら、仁美はあることを考えていた。
さやかが走って来てまで自分を呼び止めた理由だ。
仁美(……そんなこと、考えるまでもなく決まっていますわね)
言うまでもなく上条恭介に関することだろうと、そう確信していた。
昔から三人でいたのだ、互いの本心は筒抜けで建前など有って無いも同然と言っていいだろう。
仁美(さやかさんも私が上条くんを慕っていることに気がついているはず……)
だとすれば、これからさやかの口から出てくるであろう言葉は謝罪か、慰めか。
仁美(それともあるいは……さやかさん自身を正当化する為の――)
じわりと黒いモノが心に染みだした。
そんな感情をかき消すように、ガラスが隔てた外から喧騒が聞こえてきた。
仁美「……?」
声につられて店外の歩道に目をやると、小学生であろうランドセルを背負った男女三人組の子どもたちが
楽しそうにはしゃぎながら、ガラス越しに眺める仁美の横を通り過ぎていった。
仁美(わたくし達も昔はあんな風に……)
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