過去ログ - ほむら「願いの果て」2
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82:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage]
2014/05/25(日) 22:13:36.65 ID:bOYkz5VF0
 
仁美「ぅ……ん……」


   並ぶ無人のブランコが音を立てて揺れている。


仁美(わたくし……眠って……?)


   仁美は眩暈に揺れる頭を押さえて、遊具のそばに備え付けられた時計板を仰ぎ見ると
   この場所に着いてからまだ十五分程度しか立っていないようだった


仁美(なんだか悪い夢を見ていたような……)


   仁美は背後に気配を感じて振り返る。
   遊具の縁に止まっていたカラスと目が合った。

   カラスはしゃがれた鳴き声で威嚇するように一鳴きしてから、オレンジがかった空へと飛び立っていった。


仁美(……?)


   目元のこわばりに違和感を覚え、手で拭う。

   カサついた感触が指先に触れた。


仁美「涙……?」


仁美(何故でしょうか……?)


   その理由に思い当たる節は無かった。

   こんな僻地のブランコの上で佇んで、まるで深い悲しみにくれて泣いていたようではないか、と
   頬に手をあて首をかしげる。


仁美(可笑しいですわね、今のわたくしはこんなにも満たされていますのに)


   仁美の足元に伸びる影。

   俯いていた視線を持ち上げる。


仁美「あ……いいえ」

仁美「少しだけ、考え事を……」


   仁美はかぶりを振って、それから視線の先に微笑みかける。


仁美「でも、なんでもありませんわ」


   そして差し出されたままの手を取り、立ち上がる。
   その反動でブランコの影が躍った。


仁美「さあ、行きましょうか」


   うっとりした表情で見つめる仁美の双眸。

   向かい合った線の細い少年は、穏やかな笑みで夕日を背負いながら
   しっかりとその手を握り返した。


仁美「――上条君」
 
 
 



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