過去ログ - ほむら「願いの果て」2
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93:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/08/24(日) 19:34:05.57 ID:5LHomJ4mO
 
 
      『希望よりも熱く、絶望よりも深いもの。 ーー愛よ』


   私の記憶の底に埋没するにはまだ比較的新しい、神を貶め悪魔を名乗ったあの日から、
   一つの季節が過ぎようとしていた。

   最初は度々あった鹿目まどかの覚醒も、今ではそれの起こる頻度は目に見えて減少しており、
   彼女の精神は目に見えて安定していようで、おそらく私が用意したこの世界に馴染んだのだろう。
   不安や懸念が無い訳ではないが、ひとまずは安心と言ったところか。

   なので最近は、授業を抜け出して、校舎の屋上でまだ熱の残った西寄りの風を肌に感じながら
   何をするでもなく、こうしてただ視界の端に流れ行く雲と、空の青を眺めるのが日課となってしまった。

   念のためまどかの監視目的で学校に来てはいるものの
   最早、完膚無きまでに人外とも言えるこの境遇となっては、
   勉強や集団生活への適応訓練などといった人間社会の風習など、参加してもしなくてもどちらでも構わないだろうし
   そして、何よりも原因である私と彼女との接点は必要最小限でなくてはならない。
   下手に刺激してしまっては、彼女の記憶を呼び覚ますことに繋がりかねないからだ。

   最も、転校初日のやり取りで不信感を与えてしまったのか、
   彼女の方からこちらと若干の距離をとられているが、
   それは、寧ろ好都合と言えるだろう。


ほむら「……」


   無気力に仰ぐ空を、つがいだろうか、二羽の小鳥が仲睦まじく寄り添って飛んでいた。

   堕落の対象が自身である悪魔など聞いたことはないが
   こうして無為に過ぎる時間は、同時に鹿目まどかの人間としての人生を守れている証であるのだから
   今はこの多大な意味ある暇(いとま)は、そう、私にとっての至上の幸福と言えるのではないか。

   ーーそんな昼下がりの思い見と、たった今の今まで此処にあった穏やかな時間が、
   余りに呆気なく、そして突如としてその終焉を迎えるなどと、誰が予想しただろうか。

   その瞬間、私の身体が僅かに跳ねた。

   完全に意識が無防備状態だった私の背後から声がしたのだ。
   静寂の中でようやく聞きとれる位の小さな声が。


まどか「暁美……さん?」


   何故、彼女がここにいるのか?
   何の用? 授業は? 一人きり?

   彼女を見て先ず、聞きたいことが瞬時に巡ったが、
   それを口には出さずにとりあえず、驚きに見開いた眼と焦りをそれと悟られないように素早く引き締める。

   悪魔には余裕が必要だ。
   私は無言で彼女の次の言葉を待つことにした。
 
 


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