8:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/02/12(水) 22:11:45.13 ID:slx1J284o
「あ、それ私も見ていい?」
「どうぞ。ためになりますよ」
千鶴さんの発言でタブレットを手元に戻すと、互いの膝を合わせてすり、すりと画面を真剣に撫で始めました。
その姿には必死に勉強する受験生のような気概すら感じられましたが、決して彼女たちが無知だとか、そういう訳ではないと思います。
普通に渡せばいい。
でも、その普通が駄目だとしたら?
読み込んでゆく二人には、そういった無数の仮定があるような気がします。
「……それは見ないほうがいいです」
だから、私は彼女の視線をタブレットに向けるのを制止しました。
「どういうこと?」
千鶴さんが怪訝な声色で問い返してきますが、私はそのまま返します。
「確かにそれを参考にして考えるのもいいかもしれません。ですが、Pさんが喜ぶのはやっぱりいつもの皆、素直な本当の姿だと思うんです。……ねえ、ありすちゃん?」
「う……」
素直になれないからこの日を通じて素直に接する。チョコレートに思いを包むことで、普段言えないような事も言えてしまう。
そういった『きっかけ』も、その日の役割なのかもしれません。
この言葉にはそれなりの納得を感じてもらえたようで、思い思いに取り込んでは頷いて聞いてもらえました。
変にこだわるよりも、敢えて飾らずに伝えた方が良い事はあの人の人となりを見れば誰しもが思うことです。
なんとかなるさ、という気持ちでアイドルをやることは好ましくありませんが、本人の純粋な気持ちを表すためには、むしろそういう感覚で行った方が良いのではないでしょうか。
二人もそれにはすぐ共感し、いかにPさんがそういう人格の人間であるかを――ちょっと気づいてもらいにくい欠点なども含めて――ありすちゃんが口をへの字にして吐いていると、不意に千鶴さんが私の目を捉えました。
「じゃあ、せめて翠さんの、ぷ、プロデューサーへの……渡し方を聞いてもいい?」
その時、私の意識が硬直したのがはっきりとわかりました。
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