16: ◆ZuU1SJY84s[saga]
2014/03/06(木) 23:57:13.97 ID:BWC2SPNh0
突然、視界がぼやけた。思わず「え?」と言葉に出した。思考が止まる。考えろ、考えて何が起こったのかすぐに理解するべきだ。
まず最初に視界がぼやけた理由を考えようと思う。「え?」「え??」いや、そうじゃなくて。
落ち着いて顔から何かが離れた事に集中しなければ、右手を顔に、「な、ない!」なんとか搾り出すように声に出した。
兄なんてもう関係ない。最優先するべきはこの顔を隠すことだ。両手で顔を覆いしゃがみこむ。
散々気をつけていたのにあっけなく無くなってしまった。
自分の顔を隠すために、付けていたはずの物が一瞬で消えてしまった。
「落ち着け」
誰かの声。助けてくれるの?こんな私でも助けてくれる人がいる?
「顔を上げて」
見られるのは嫌だ。頭を右へ左へと振る。
「大丈夫、今ここにいるのは俺だけだ」
嘘だ。そうやって見て笑うんだろう。クラスみんなで私を馬鹿にするんだ。
「メガネを取って悪かった」
その一言に驚いて顔を上げる。と、視界が戻ってきた。
目の前、私と同じ目線に兄が居る。でもどこかおかしい。いつもの余裕が無いように見えたからだ。
兄「すまなかった」
たった一言だけのシンプルな謝罪。家に帰った後、一度も話さないまま今日という日が終わった。
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