過去ログ - 千早「先生と私」
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12:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/02(日) 20:41:21.06 ID:bEFC5GTXo
 さて、私は基礎練習は毎日同じ量をこなす。
今日も同じ量をこなしたが、いつも楽しくてじっくりやれる練習に何かじれったさを感じた。

 練習を切り上げて、自由時間に入る。
今の気分は――決まっている。今の気分は昨日の夜から、決まっている。

 不意に、あのオルガンのイントロが目の前に現れる。
均整なオルガンと丸っこいベース音、そして、どこか楽しげに跳ね回るドラム。
聖地エルサレムだ。ただし、いーえるぴーの。

 私は息を一つ、大きく吸った。

 歌い終わって後ろを振り向く。彼が聴いているという確信があった。
彼は居た。この間のように階段に座っているのでなく、立ったまま驚き、嬉しそうに私を見ている。

「ELPか」
「ええ、まあ。あれ、カバーなんですよ?」
「そうなのか」

 彼はふぅ、と溜息をついて階段に腰かけた。教師然と傍に立っているより、そっちの方が似合っていた。

「"展覧会の絵"もカバーです」
「そうなのか」
「ELP、が、ムソルグスキー、を」
「そうなのか」

 彼はどこかふわふわした口調で相槌を打った。私はちょっと肩をすくめた。

「それじゃ、次は先生のリクエスト。スピッツで渚」
 先生はおお、と歓声を上げてパチパチと手を叩いた。
拍手が鳴りやんでから、私はあのイントロを耳に思い浮かべる。
踊り場を覆っているピン、とした静けさを一瞬だけ感じ取る。
渚。シーケンサーの音、それから弾けた水の粒のようなきめの細かいギター。

 私は今一度、息を吸う。

 ――囁く冗談でいつも、繋がりを信じていた。


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