18:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/02(日) 20:47:12.98 ID:bEFC5GTXo
基礎練習を済ませてから、私は目を瞑って考えた。
今の気分では、歌いたい歌は何も思いつかなかった。
溜息をついて、いつも先生の座っている階段に腰かけてみる。
この席から私はどう見えていたのか。私の頭はちょうど窓くらいの高さだろうか。
窓枠の向こうの均一な水色に、もう一度溜息を吐いた。
「今日は何も歌わないのか?」
階段の上に先生が立っていた。控えめに挨拶すると、先生はゆっくりと降りてきて私の隣に座った
「昨日、二か所ほど、オーディションの申し込みして」
「緊張するか?」
返事を躊躇う。
「上手く行くさ。仮にダメでも、捨てる神あれば拾う神あり、って……」
先生はそこで区切って、頭を掻いた。
「ごめん。オーディションの前から、落ちること考えちゃダメだよな」
「いえ、良いんです」
私は自然に笑った。先生は笑い返してくれた。
「ご両親には何か言われたか?」
「……いえ、母には何も言ってないので」
母には、という少し不自然な言葉で先生はおおよそ察してくれた。そっか、と相槌を打って。
「早いうちに正々堂々、言った方がいいと思うよ」
「別に、言うのが嫌で黙ってるわけじゃ……」
私は口を噤んだ。言おうと思えば、昨日のうちに電話でも何でもできた。
お母さんに反対、されたところで何だというのか。
28Res/29.76 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。