21:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/02(日) 20:49:59.11 ID:bEFC5GTXo
「もしもし、お母さん」
電話の向こうで少し戸惑いというか、そういう気配がした。
前から、あまり日にちが空いていないのに、電話がかかってきたからだろうか。
「私、歌手になろうと思って」
「……そうなの」
「それでオーディション用に履歴書はもう用意してあるんだけど、保護者の同意書が必要なの。書いてほしいんだけど、いい?」
いい? と、疑問符を付けたのは、私のせめてもの礼儀なのか。
「分かった。すぐに必要なら、お母さんのところに直接持ってきて」
お母さんは意外にも何も言わずに了承してくれた。
「ありがとう。じゃあ明日にでも持って行くね」
そうして切ろうとしたところへ。
「ごはんはちゃんと食べてる?」
「毎日ちゃんと食べてる。じゃ、また明日。お母さん」
ようやく電話を切った。お母さんの小言が不思議と鬱陶しくなく、むしろ温かに感じられた。
「珍しい」
独り零して、私はCDプレーヤーの電源を入れる。
この間の五枚はとっくに返したことを思い出して、棚から取りに行く。
今の気分は――
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