過去ログ - 梓「経線上のアリア」
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11:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/05(水) 00:48:43.76 ID:kVbbRwGOo

 私があのぐらいの頃は今よりずっと人見知りで、
 ずっと両親の足下に隠れてびくびくしているような子で、
 そのくせなつくと理由をつけてはくっついて離れないというめんどくさいやつだった。

 両親の仕事の都合で転校が多く、海外旅行も何度もしたせいで、
 自己紹介なら場数を踏んで慣れていったはずだ。
 でもレコードや楽器に囲まれて育った同年代の子なんてそうそういなくて、
 たいていは友達に話せないことを抱え込んでばかりいた。
 たまに自分の好きなことを話してみるものの、
 相手は苦笑いを浮かべるか目を白黒させるばかりで、ますます思い知らされてしまう。

 人見知り気味だった私が身につけた武器は「ギターの中野さん」だ。

 小四ではじめたギターは、
 いろいろと不器用で小回りがきかない私にしては珍しく、
 身体になじんで染み込むようにして上達していった。

 楽器というのは便利だ、
 ザッパもディランもコルトレーンも知らなくたって音だけで「弾ける」ことだけは伝わる。

 どうせ伝わらないのだからと
 物静かで落ち着いた子になっていった私にとって、
 「ギターの中野さん」は都合の良いプラカードだった。
 そうそう悪い扱いもされなくて、たまにほめられたりもして、そこそこに気持ちもよかった。

 小学校の卒業式で当時流行っていた曲の合唱にギター伴奏した時なんかは、
 周りの大人や子どもたちからもきらきらした眼差しを向けられて、
 多少は居心地わるくもあったけれど、
 本当はそこまで悪い気分でもなかった。



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