過去ログ - 梓「経線上のアリア」
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8:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/05(水) 00:47:23.93 ID:kVbbRwGOo

 私は文庫本と携帯電話を傍らのバッグに押し込むと深く息をついた。
 かさついた唇から流れた息とともに、
 自分の中のなにかまで落としてしまった気がして、
 足下に目を落とす。

 私の影は傾いた陽によってベンチの裏側へと追いやられ、
 引き延ばされている。
 音がしない、と思ったら
 子供たちが水飲み場近くで別の携帯ゲームをはじめていた。

 自分の細い右脚のつま先を伸ばして、地面に自分を囲むような線を引いてみる。
 左側から右に向かって円を描くように、できるだけ広く。
 けれども体の小さな私に引ける半径なんてたかが知れていて、
 自分のテリトリーの狭さにわらってしまいそうだった。

 眺めていた子供たちの景色がかすんで痛みでうるんだのは、
 目も乾いていたからだけど、その目をこすりながら、
 水族館のガラス越しに映る生き物たちが屈折して少し歪むのを思い浮かべたりする。



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