過去ログ - 少女「のんべんだらりと」
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42:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga sage]
2014/03/18(火) 19:09:11.30 ID:b9L47LzDO
〜 魔女ハウス 〜

 玄関のドアを開けると、巨木の中から光と音が溢れてきた。

ババ「ん? おやおや、これはまた大勢で来たのう」

 魔女は玄関のすぐ向こうの部屋にいた。
 うず高く書類が積まれた机の隣でぶかぶかの黒いローブを着込み、書類片手にロッキング・チェアに座ってゆらゆらと揺れている。
 魔女は悠然とした動きで書類と鼻に掛けていた丸眼鏡を机に置き、少女たちに顔たけを向けてきた。
 だが魔女は少女の顔色を一瞥すると、言葉を交わすまでもなく話を察したようだった。

ババ「ふむ、寝床を貸して欲しいなら空いている場所を使うとよい。毛布くらいは貸してやろう」

少女「あ、ありがとうございます」

 すんなりと寝泊まりの許可をもらって拍子抜けする少女に、魔女は興味を無くしたように睫毛を伏せた。
 そのまま魔女はランタンの暖かい灯りの下でロッキング・チェアを揺りかごのように緩慢な動きで前後させる。
 辺りには少女が橋の上で聞いた曲が流れていた。
 しかし、楽器も演奏者も見当たらない。
 少女はきょとんとしながら不思議そうに家の中を覗き込んでいたが、アルラウネたちに急かされて我を取り戻した。

アルラ6「はやく中に入るのー」
アルラ8「はやくはやくー」

少女「あ、ごめん、……ああちょっと押さないで!」

 夕闇に沈み始めた外界から巨木の内側へと一列、もとい一丸となってなだれ込む。
 少女はそのまま後ろ手にドアを閉めるが、少女の興味はやはり鳴り響き続ける音楽に引き込まれていた。

ババ「ふむ、音源が気になるようじゃな?」

 またもや見透かしたように魔女が片目を開けて口元を吊り上げる。
 少女は何だか子供扱いされているようで気恥ずかしくなり頬を赤らめるが、結局好奇心には勝てなかった。

少女「はい、楽器も無いのに何で音が鳴ってるのか……」

ババ「それはな、蓄音機のおかげじゃ」

少女「蓄音機?」

ババ「ほれ、アレじゃアレ」

 魔女が部屋の一点を指差す。
 少女がそちらに目を向けると、シルクのテーブルクロスを掛けた足長の丸台の上に奇妙な木箱が置かれていた。
 上には花を咲かせたみたいな漏斗状の金属の筒、隣にハンドル、中ほどに黒い円盤がくるくる回っている。
 耳を傾けるまでもなく、この奇妙極まりない箱から音は確かに聞こえてきている。

ババ「さて、どうじゃ?」

 何がどうなのか分からないが、少女は思った通りを口にした。

少女「……魔法?」

ババ「ぷっ、くはははははっ!」

 急に腹を抱えて笑い出す魔女に、少女は耳まで真っ赤になって口を『へ』の字に引き結んだのだった。


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