59:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2014/04/29(火) 06:58:06.09 ID:NyGRFkgDO
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天真爛漫、いつもニコニコ、ちょっと知恵が足りない、無害な生き物。
おそらく、村での自分の評価はそんな所だろう。
だけどそれはそういう『役』を演じていたからだ。
末娘の自分に求められるものはそういう『役』、それこそが『よい子』だったからだ。
産まれた子供の半分が大人に育ちきれたら御の字という環境では、子供に人権なんか無い。
比較的身体の強い子供も、病気やケガであっさり死んでしまう事もある。
誰が大人まで育ってくれるのか分からない以上、労働力として未完成の子供は大人の手をわずらわせない事が一番の『良い子』なのだ。
そんな良い子を演じる私に、父も母も兄姉も村人たちも全員騙されていた。
だけど実際は、いつも不満を胸に抱いて、自分の境遇を呪っていた。
私は変わりたかった。
物怖じせずに胸に秘めた思いを打ち明けられる勇気ある子供に。
私は変えたかった。
自分の周りの負に満たされた環境すべてを。
私は望んでいた。
心から打ち解けられる良き理解者を、明るい未来を。
だけど村は貧しいままで、私は誰からも相手にされなかった。
親ですら、私をあっさりと人買いに売り渡した。
結局、『私』を真っすぐ見てくれる人はいない。
いや、この森で出会った人ではない連中はもしかしたら『私』を見ようとしてくれていたのかもしれない。
ただ、張り付けた仮面を剥がされて本当の『私』を見られる事があまりに苦痛でついカッとなって……
少女「……あれ?」
見られたいのに、見られたくない?
悲劇のヒロイン的思考に陥りかけていた頭に理性のストッパーさんが茶々を入れる。
ついでに理性さんは答えも教えてくれた。
少女「私は単に自分の都合のいい相手を求めていただけ?」
どっと疲れが出て来て、前のめりにその場に腕を付いた。
少女「ダメじゃん、わたし……」
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