63:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2014/05/01(木) 03:24:18.33 ID:Pc59xujDO
〜 数分後 〜
アルラたち「…………」
道の片隅に並ぶ五つのツボミ。
それは野花だったり、樹木の幹から顔を出したばかりの新芽だったりと見た目はまちまちである。
ただ、やたらとデカイ。
その正体はもちろん、アルラウネたちである。
Bパーツ内に上半身まで収めた完全防御形態にして背景と一体化する欺瞞形態であり、その高次元で完成された安全性と快適性から別名『おねんねスタイル』ともいう。
そしてその別名に漏れず、アルラウネたちはこぞって深い眠りに落ちていた。
アルラ1「すやすや」
アルラ3「くー、くー」
人間の場合、空腹は睡眠を阻害する。
しかしアルラウネ含む妖樹族の場合、経口摂取以外にも光合成によってエネルギーを獲得する事が出来る。
そのため陽の光の恩恵を受けられない夜間はロスを抑えるため、空腹であればあるほど本能で眠りが深くなる傾向にあった。
アルラ7「うにゅ、眠いの……」
だがそんな本能に後押しされて皆が寝息を立てる中、一人だけ眠い目を擦りながら起きているアルラウネがいた。
理由は二つ、少女を見つけて、さらにサプライズを与えるため。
『お姉さんが近づいて来たら声を上げて驚かしてやるの』
そんな意見に全員賛同しての行動である。
みんなが寝入る事で早々に破綻した案だったが、このアルラウネだけは実行しようと眠りを堪えていた。
アルラ7「お姉さんはわたしが、……うにゅ」
奇しくもこのアルラウネは少女と初めて遭遇したアルラウネである。
このアルラウネは少女の事を他の仲間たちよりも深く慕っていた。
理由はアルラウネ本人もよく分からない。
ただ時折、血塗れで行き倒れた少女の儚げな笑みがアルラウネの頭によみがえる。
恐怖は無い。
代わりに、何だか目を離しては行けないというか、何をしても助けてあげたいというか、そんな気持ちにさせられるのだ。
そして――少女は覚えていないだろうが――森ジジイの幹の中でたゆたう少女のために樹液を混ぜている時、アルラウネは奇妙な安らぎも感じていたのだった。
何度繰り返して考えてもこの感情に答えは出ない。
でも、もしかしたらとアルラウネは考える。
血塗れでアルラウネに手を伸ばした少女の口から零れた言葉、アルラウネまで届くより先に雨音に掻き消えたあの言葉が何だったのかを知れば、この自分が抱いている気持ちが分かるのではないかと。
少女との一日は目まぐるしく、今まで聞きそびれていたが、今度こそは聞いてみようとアルラウネは思っていた。
みんなが寝入っているこの状況は不安だが、何だかワクワクと胸の躍る期待感があった。
この気持ちの答えを誰にも知られず、アルラウネと少女だけの『秘密』に出来る。
それは何だか無性にこそばゆく、甘美な響きで胸を高鳴らせた。
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