過去ログ - 少女「のんべんだらりと」
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75:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2014/06/06(金) 07:09:37.55 ID:C2MA4niDO
〜 村 〜

 馬車が着くと、村は青ざめた月光の下で静かに寝入っていた。
 商人の唯一の従者は素早く御者台から降り、慣れた足取りで村長宅を目指す。
 そして数分後、御者は外套を上に羽織った村長を引き連れて馬車まで戻って来た。
 村長は馬車の荷台の上にふんぞり返る商人にうやうやしく頭を垂れる。

村長「これはこれは、よくぞおいで下さりました」

商人「出迎えご苦労、早速だが寝床と飯を用意してもらおうか」

村長「ええ、町に比べたら大したお持て成しは出来ませんが誠意を以てご用意させて頂きます。
   ところで、何故このような時間に来られたのでしょう?
   朝昼に来られましたら、礼を失する事もありませんでしたのに……」

 言外に『夜来んなよ、迷惑だろうが』と言う村長だったが、この商人がそんな機微を解する訳もない。

商人「時は金なりだ。人の動かぬ時にこそ動く価値がある」

村長「おお! なるほど、タメになります」

商人「そうだろうそうだろう、だいたい……」

 商人は丸い腹を支えながらえっちらおっちら馬車から降り、話を続けながら村長宅へと案内されていく。
 そんな商人と村長の背中を見つめながら、御者は呆れたようにため息を吐いた。
 どうせ今から寝るのならば無理に夜の間移動する必要が無かったのではないのか、商人なら人が動く時にこそ動けよ、とか言いたい事は山ほどあるが御者は御者台に戻って馬を操り、村長宅の脇の馬小屋に馬車を移動させた。

御者「ふぅ、向こうは柔らかいベッドに美味いメシ。かたやこちらは馬車に雑魚寝で硬い干し肉か」

 御者は皮袋から黒い干し肉を一本取り出しタバコをふかすように口にくわえた。

アルラ7「むー! むむー!」

御者「お互い災難だな? 一本食うか?」

アルラ7「むぐぐーっ!! むー!」

御者「おっ? 欲しいか? おっ?」

 御者は干し肉を指に挟み、まるで猫じゃらしを振るようにアルラウネの前で干し肉を振る。
 アルラウネは干し肉に飛び付くように跳ね回った。
 一見ほのぼのした光景だが、
『いるかボケがーっ!! どうせならキサマをぶっ倒して身ぐるみ全部剥いじゃるわい!』
 と、アルラウネは鼻息荒く猿轡の内側で叫び、全力で御者に飛び掛かっていた。
 だが結局、両手足を拘束されているアルラウネは力を使い果たし床に倒れたまま肩を上下させる。
 眼前で振られる干し肉と御者の笑顔に、アルラウネはこめかみに青筋を作りながらきつく猿轡を噛み締めるのだった。


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