過去ログ - 勇者「剣と魔法のトライバル・クロス」【安価あり】
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469:第3章[saga]
2014/04/04(金) 23:53:11.45 ID:TYOiWCRe0


 瞬く間に赤い光に包まれた人虎は、なにがなんだかわからずに立ち尽くす。

 よく見れば、赤い光に触れた彼女の白い毛並みが次々と燃えるようにして消失していた。

 熱いというよりむしろ、春の日差しのような温かさの光。その中で人虎が見たのは、見る見るうちに衰弱していく子爵の姿だった。

 明らかに異常な汗を流し、顔色は死体のような土気色。巻物に触れている指先の皮膚が、枯葉のようにひび割れていく。

 人虎の身体はまだ半分も治っていない。それなのに、すでに子爵の魔力はほとんど底を尽きかけていた。


子爵(……ああ、くそ……)


 魔人から生まれたハーフである三女と違って、人虎はただの魔物を足されただけの不完全な存在。

 だからこそ消費する魔力も少ないのではないか……という子爵の読みは的中していた。

 しかしそれでも、圧倒的に魔力が足りない。


子爵(やはり私では駄目なのか……)


 巻物から放出される赤い光が、目に見えて減っていくのがわかる。もはや絞りカス同然の魔力が、もうじき空っぽになる。

 ゆっくりと頭に霧がかかるように意識を手放していく子爵。それは安らぎとは程遠い、冷たい眠りに他ならない。

 しかし遠のいていく意識の中で、子爵は最後に見た。

 自分のひび割れた手を、横から掴む力強い手を。


勇者「死ぬなよ。お前には、まだやるべきことがあるんだ」


 巻物から放出される赤い光が、爆発的に増加する。

 そして―――



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