過去ログ - 海未「誕生日に菊の花を貰ってしまいました」
1- 20
14:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/15(土) 01:32:58.88 ID:GSBZbNEV0
園田家の剣道場は、いつも冷えた空気と厳粛な気配が漂っていて、海未は静かにその冷え込んだ空気を吸い込んだ。

いつもここに来ると、気持ちは静かになり集中力が増す。それを海未は心地よく感じていた。
雑念はない、後は無心に剣を振るうだけ。

左手に携えた竹刀は、海未にとって真剣とほとんど変わらない。

抜刀。

――正眼の構え。ここから繰り出されるのは――

突き出そうとした竹刀は、虚空を突き刺しはしなかった。
ある感覚が駆け抜けて、海未はふっと構えを解き、静かに振り向いた。

剣道場の入り口で、一人立っている少女がいた。

「穂乃果」

「海未ちゃん、ハッピーバースデイ」

少しぎこちない笑顔で、穂乃果は笑っていた。

だから海未もにこりと笑って、穂乃果の方へと歩み寄る。

「ありがとうございます、穂乃果」

「えへへ、もう何回も言ってるのにね」

「ふふ、十六回目ですね」

二人はそこでくすくすと笑いあう。

「海未ちゃん、今年は穂乃果がお饅頭作ったんだ。一緒に食べようね」

「ありがとうございます、穂乃果」

静かな沈黙。

「ねえ、海未ちゃん」

「はい?」

「……ううん。私たち三人の内、誰かが誰かとの関係が変わっても、いつまでも三人で居ようね?」

脈絡のない、それでいて大きな意味のある言葉。
海未はそんな事馴れっこで、穂乃果も海未に絶大な信頼を寄せているから、こんな事は、お互いに気にしない。

「――ええ、必ず。約束しますよ、穂乃果」

目と目で解る。表情で解る。
それは大切な約束。

ピリリリリ、と剣道場の隅で鳴り出した携帯電話。

穂乃果は携帯電話を少し恨めしげに見て、それから微笑んで、呟く。

「海未ちゃん。行ってらっしゃい」

「え?」

海未は穂乃果に背中を押されて戸惑いを隠せずいた。

「ことりちゃんが、待ってるから――」


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
29Res/34.75 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice