過去ログ - P(ここは、どこなんだろう?)
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3:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga sage]
2014/03/17(月) 01:21:56.67 ID:d7SAN4gj0

また、幾ばくか歩を進めたところにその空間は広がっていた。

ぼんやり暗くと束の間に、闇夜が訪れていた。

周りを見渡せど何もなかった、あるのは真上にすっかり浮かんだ丸い月。

月の明かりがあたりをともし、そして月の下に人影ぽつりと。

貴音「ようこそ、旅の方」

言葉を待てばお待ちしていましたと続きそうなくらい必然に、

その少女は自分に声をかけた。

貴音「ここは、望みの地。ただし、ここに望むものはありません…」

はて、それならなぜ望みの地と言うのか。

貴音「空は見ましたか?見ずとも目に映えますでしょうが…」

先から見えた、満月のことだろう。

貴音「決して届くことのない、あの月こそが希望です」

手に届かぬものを希望と、少女はこぼした。

貴音「届かぬが故の希望、きっとあそこには、喜びがあふれているのでしょう」

空ばかり見る少女の目は月の光を帯び輝いていた

その少女の居る場所は、まるで戦後の瓦礫山。

ここに何があったのか、自分が知る術はなかった

貴音「満月とは、望月と申します」

なるほど、この地の名にも合点がいった

貴音「しかしあれは、小望月(こぼうげつ)…満月の前の月なのです」

皮肉なものだ、と嘲笑してしまった

貴音「可笑しいでしょうか?わたくしには、あの月こそが一番輝いて愛おしいのです」

貴音「満月となった月は、後はゆっくりかけていき…後は何も残らない」

貴音「しかし、あの月にはまだ、望月があるじゃありませんか」

明くる日の満月が…残っているということだろうか

貴音「あの月が満ちることは、わたくしは見たことがありません…なればこそ、明日へ希望がもてるのです」

そういうと彼女は、月をただぼうっと見続けるだけとなってしまった

彼女に転機が訪れることを祈りながら、背を向けた

"かの旅人に月のお導きがありますように"

どこに放ったか分からない祈りは、確かに自分の心に収まっていた



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