9:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/03/18(火) 00:46:48.51 ID:QIYzk+id0
雨音が鳴り続ける放課後の教室に、本のページが捲れる乾いた音が鳴る。
「ボクはね、君のような男が大の苦手だったんだよ」
セミロングにまで伸ばした髪を右手で弄りながら、彼女は突然そう言った。
「君のような、冷血で非道でいてクラスの中心どころか屋外にすらいないその精神が、苦手だった」
懐かしむように乏しているのか貶しているのか、鼻で微笑むように笑い、彼女は言葉を続ける。
「いや、いやいや、ボクがまさかそれを看破されるとは思いもしなかった」
くっくく、と何処か抑えたような含み笑いだったが、それもまた彼女らしさというもので、俺は何も言わずに、本を捲る。
なんだかそれが何処と無く現実逃避のような気がしてきて、溜息を漏らしつつも片手で本を閉じた、
格好付けたがりなのだ、年頃の少年というわけである。
自身の登校鞄に読んでいた小説を押し込み、身体を少女に向き直して、椅子に座る。
「おや?良いのかい?好きなんだろう?それ」
浮つき、ニヤついた顔を浮かべる彼女は、無様にも椅子の足を引き摺りながらこちらへ歩いてくる。
――普通に持ち上げればいいのに。
まあそれは彼女らしくもない事だ。
「――それで、いきなりなんだよ、悪いがこの雨が止むまでは教室からは出ないぞ」
俺は登校鞄に押し込められた小説を見遣る、
「知っているよ、君が本を大切にする類の人間だという事くらい」
少しばかり不機嫌そうに――しかし笑うことを止めない彼女は、更に距離を詰める。
もう少しで膝と膝がくっつきそうな距離まで詰め寄った彼女の顔に青みがかった艶のある黒髪が垂れる。
「……用件を言えよ」
「がっつくなよ、男らしくなれ」
その言葉に眉を顰めるものの、だからといって怒り出すような内容でもないので、
少々複雑な気分だが、何も言い返さずに黙る。
沈黙。
「はぁーー」
長い溜息を吐かれ、メンタルに少々傷が付いた。
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