5: ◆2DegdJBwqI[saga]
2014/03/19(水) 15:10:52.00 ID:piabdirRo
自分から訪れたくはない。
だが、訪れなければならない理由がそこにはあった。
そろそろこんな所で立ち尽くして時間を無駄にするのも終わりにしなければならない。
踵を返して帰りたくなる衝動を抑え、一度キリリと表情を引き締め、
にこやかな笑顔を心がけながら病室の引き戸を開けた。
途端に恭介の耳を、彼の身体の隅々まで染みついた音色が通り過ぎていく。
機械から流れる優しいヴァイオリンの演奏が、
邪魔にならない程度の穏やかな大きさで部屋を満たしている。
一人の少女が白いベッドの上で上半身を起こし、それに耳をそばだてていた。
そしてその視線は、何もない壁をまっすぐ見つめていた。
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