2:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/24(月) 14:15:47.82 ID:I629TTwQo
小さいころの私はどちらかと言えば家のそとで遊ぶのが得意じゃなかったけれど、
それでも、この砂鉄集めだけは気に入っていた。
公園の砂場や校庭の砂、河原なんかを見ると、あそこからどれだけの黒いものが採れるだろうとワクワクした。
運動が得意じゃなかった私には、砂鉄のズッシリ詰まった重いガラス瓶は誇りだった。
私だって、がんばればこのくらいのことができる。
そう思えた。
私たち幼なじみ三人は小さいころの一時期、よく砂鉄集めに精を出した。
もっとも結衣はこの退屈な遊びがあまり好きじゃなかったらしい。
ときどきは私に付き合ってくれたけど、それでもすぐに飽きてしまってそこら中を駆けまわりはじめた。
活発な結衣にはこんなちまちました作業より、からだを動かすほうが好きだったらしい。
結衣はただ走ってるだけで楽しそうだった。
私も結衣の走ってる姿を見るのは好きだった。
だから結衣の走っているあいだは、私がかわりに結衣の瓶に砂鉄を集めた。
私は努力して、できるだけ純粋な、きれいな砂鉄が結衣の瓶に入るようにした。
走るのに疲れた結衣が戻って来て、砂鉄の溜まった瓶を見ると「ありがとう、京子」と言った。
だけど結衣がそのことにどれだけ関心を持っていたかはわからない。
しかたないことだ。
結衣は走る。
私は砂をいじる。
それぞれ別のことが好きで、近くにいても別のものを見ていた。
思えば、あのころの私たちがいつも一緒にいたのは不思議かもしれない。
それでも私は結衣のお礼が聞きたくて、砂鉄を集めた。
私がたくさん砂鉄を集めると、とりあえず結衣は笑顔になってくれた。
べつに不思議になんて思わなかった。
「よく集めたな、京子」なんて褒められるのは嬉しかった。
結衣に勝てるのは砂鉄集めくらいだ。
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