過去ログ - 京子「あかりと磁石」
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3:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/24(月) 14:17:24.35 ID:I629TTwQo

 私といっしょに、一番熱心に砂鉄集めをしてくれたのはあかりだ。
 あかりは私みたいに運動が苦手なわけでもないし、結衣といっしょに駆け回るのも好きだった。
 それでもあかりは根気よく付き合ってくれた。
 あかりには砂鉄集めの本質のようなものが見えていた。
 地面にしゃがみこんで、ひたすら同じ手作業を繰り返す。
 黒いものでいっぱいになった瓶は、積み重なった作業のあかしだ。
 私とあかりはほとんど話もせずに砂鉄を集めた。
 あかりがほんとうに砂鉄集めが好きだったのかはわからない。
 もしかしたら、私が一人じゃかわいそうだと思ったのかもしれない。
 だとしても、もくもくと砂鉄を集めるあかりの姿はりっぱなものだった。
 私はこの歳下の幼なじみにあこがれのようなものを抱いて、多くのことを学んだ。
 砂鉄集めは静かに。落ち着いて。笑顔で。



 そんなことを机の引き出しから出てきた、「あかざあかり」とマジックで書かれた棒磁石を見ながら思い出した。
 砂鉄集めに使っていた磁石のはずなのに、ひとつもゴミが付いてない。
 律儀にビニール袋を使っていた証拠だ。

 磁石を発見したのは、結衣の家にも行かずに部屋でゴロゴロしていたところを「掃除をしなさい」と母親にやんわり促され、
 抵抗するほどの言い訳も思いつかなかったのでしかたなく掃除をはじめた矢先のことだった。
 S極とN極で青と赤にくっきりと塗り分けられた棒磁石は、「としのうきょうこ」と書かれた丸い磁石とくっついて出てきた。



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