20: ◆InfI0vlg76
2014/04/01(火) 09:08:02.46 ID:V7PLv1990
苦し紛れに返すと、返事はなく。姿なき声はすうっと消えていく。
(ま、待って――)
やめて。
あたしが嘘を吐きたがってるなんてそんなこと、
違うって言わせてよ。
「――ん、佐天さん!」
肩を揺すられてはっと目が覚める。
焦点を合わせると、心配そうな初春の顔があった。
「な…なに、初春?」
「なにってささ、佐天さん、話終わったら急にカクンって寝ちゃったんですよ!びっくりしましたよ、もう!」
「ああ、それはね――」
簡単に理由を説明しようとして言葉に詰まる――そのとき、また台本が頭に浮かんでくる。
(本当のことを説明するのは難しいし、なによりあたしの能力が知られちゃうかも。ならこれを話した方が…はっ)
台本にしたがって体を動かし、口を開きかけたところで佐天の顔が固まる。
(あ、あたし…)
初春に対して、能力を使おうとした。
親友を、裏切ろうと。
「…っ!ごめん初春っ!」
「佐天さん!?ちょっと、佐天さーん!」
その場で立ち上がると、呼び止める声を無視して走る。
走る、ひたすら――初春から離れようと。幸い、運動神経に優れたものがある佐天に初春は追い付くことはできず、どんどん引き離されていった。
第七学区を走り続けていて、ふと思った。
もう放課後だし、知り合いと会うこともあるかも?
そう思った佐天の耳に届いたのは、まさにその通りのことだった。
「あら?佐天さんじゃない。おーい!」
「ほんとですの」
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