過去ログ - 穏乃「麻雀に、おかしなことはつきものだ」
1- 20
36: ◆k1tEJoGb4VEz[saga]
2014/04/07(月) 03:22:06.94 ID:zgg3Dg+D0

「――何でもないよ」

 憧の問いに私は一言、短く答えた。
 この話はさっさと終わらせたい、という真意を全く隠さずに。
 続ける。

「何でもなければ、誰でもない。から、何もできない。影も形も種も仕掛けもない。そんな存在だよ、あの子は」

「ノゥ、それは幾らなんでもバッド……酷いデス、高鴨ちゃん」

 と、戒能さんが口を挿んだ。

「確かに彼女は影も形も、種も仕掛けもないようなイグジスタンス、存在ですが……決して、何でもないわけじゃないでしょう?」

「……ああ。ですね」

 確かに彼女には、残した――遺したものがあったんだ。
 それは名前。
 彼女の名前。

「みなも。……みなも、っていうんだ。あの子」

 その名前が、彼女の本名かどうかは分からない。
 もしかしたら、お得意の適当な嘘八百の一つかもしれない。

 でも確かに、もう何も語ってくれない彼女と語り合った午前二時、に。
 私は彼女の――みなもの口から、その名前を聞いたんだ。
 その事実は間違いじゃない。

「まあでも、好きなように呼べばいいと思うよ」

 彼女を呼ぶことなど、然う然うないだろうが。

 吸血鬼の成れの果てで。
 キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードだった何か。
 水面に映る影のように、もう存在しか残されていない彼女に、いったい何ができようか。

 まあ、吸血鬼に影はないけど。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
199Res/144.67 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice