過去ログ - 穏乃「麻雀に、おかしなことはつきものだ」
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◆k1tEJoGb4VEz
[saga]
2014/04/07(月) 03:22:06.94 ID:zgg3Dg+D0
「――何でもないよ」
憧の問いに私は一言、短く答えた。
この話はさっさと終わらせたい、という真意を全く隠さずに。
続ける。
「何でもなければ、誰でもない。から、何もできない。影も形も種も仕掛けもない。そんな存在だよ、あの子は」
「ノゥ、それは幾らなんでもバッド……酷いデス、高鴨ちゃん」
と、戒能さんが口を挿んだ。
「確かに彼女は影も形も、種も仕掛けもないようなイグジスタンス、存在ですが……決して、何でもないわけじゃないでしょう?」
「……ああ。ですね」
確かに彼女には、残した――遺したものがあったんだ。
それは名前。
彼女の名前。
「みなも。……みなも、っていうんだ。あの子」
その名前が、彼女の本名かどうかは分からない。
もしかしたら、お得意の適当な嘘八百の一つかもしれない。
でも確かに、もう何も語ってくれない彼女と語り合った午前二時、に。
私は彼女の――みなもの口から、その名前を聞いたんだ。
その事実は間違いじゃない。
「まあでも、好きなように呼べばいいと思うよ」
彼女を呼ぶことなど、然う然うないだろうが。
吸血鬼の成れの果てで。
キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードだった何か。
水面に映る影のように、もう存在しか残されていない彼女に、いったい何ができようか。
まあ、吸血鬼に影はないけど。
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